耳鳴りの治療法としてのTRT(耳鳴り順応療法)とは?
耳鳴りについて最新科学でわかっていること
耳鳴りの原因として現在分かっていること
物理的に音がなっていないにもかかわらず、
音を知覚する症状を「耳鳴り」といいます。
耳鳴りは人口の15%が症状を感じる一般的な症状です。
米国の研究では戦闘後の兵士の間で耳鳴りが多く報告されています。
耳鳴りの原因としては、聴力低下によるものや騒音過多によるものとされます。
しかし、必ずしも全員が耳鳴りの症状を訴えるとも限りません。
また、聴力が正常にも関わらず耳鳴りを感じる患者さんもいるのです。
ストレスなどの心理的、精神的な要因も耳鳴りに影響していることも示唆されています。
一説によると耳に関連する病気の75%以上が、
耳鳴りという症状と関係しているとされています。
https://ohmiminavi.co.jp/2018/07/16/miminari/
具体的な耳鳴りの原因となりうる病気は、
以前、ご紹介した上の記事を御覧ください!
耳鳴りのメカニズムの最新研究
Neuronという科学雑誌に掲載された、耳鳴りの動物モデルを用いた研究があります。
耳鳴りは蝸牛の損傷(聴力低下は主に蝸牛の細胞の減少とされる)が原因と考えられますが、
単純に蝸牛の損傷により聴力低下が起こっても、
耳鳴りが生じるかどうかは実はわかりません。
動物モデルでは耳鳴りを知覚していると行動的に証拠がある動物と、
そうでない動物があるそうです。
現在主流となっている説に蝸牛そのものではなく、
脳幹の蝸牛神経受容ニューロンが耳鳴りの元になっているという説があります。
つまり、耳鳴りは脳に信号が伝達される際の、
なんらかの障害によって脳で知覚されているのではないかと考えられます。
耳鳴りを知覚する動物では脳の中央脳領域において、
明確な自発発火パターンが現れることがわかっています。
TRTという耳鳴りの治療法について
約30年前に報告された有効性の高い耳鳴り治療法
耳鳴りの治療法としては補聴器の使用や炎症を抑える薬剤の投与などがあります。
その中でも神経生理モデルに基づいた訓練による治療がTRT(Tinnitus Retraining Therapy)です。
耳鳴りは先程もご紹介したとおり脳の働きにより、
不快な反応を起こしたり、長期間続くことで気になりすぎてしまうことで、
症状がより悪化すると考えられています。
そこで、まずはそうした耳鳴りのメカニズムを理解した上で、
耳鳴りに注意を向けなくてもいいように別の音を聞くことが有効です。
このTRTという治療法はまさに「ノイズ」を聞くことによって、
耳鳴りの音を意識せずに共存するように意識を向けることに、
その有効性があるのです。
報告によるとTRTの有効率は80%程度とされています。
日常生活で耳鳴りを意識せずに過ごせるのはとても嬉しいですね。
TRTで用いる音はどんな音なの?
TRTで用いる音は一般的にはホワイトノイズのような音とされています。
ホワイトノイズは全周波数が同程度に混ざっている音で、
日常的にはテレビやラジオがうまくつながらないときのノイズです。
しかし、不快であってはうまく行きませんので、
TRTの提唱者であるJastreboffによると、
「不快でなく、耳鳴りを遮蔽せず、耳鳴りの音色を変えない音で、
それ自体が注意を引くものではない音」としています。
ホワイトノイズの他にはフィルターをかけた音や、
自然音(波や川の音)環境音の録音(カフェの音など)を使うこともあります。
全国の耳鳴りの専門外来で詳しいご相談を!
耳鳴りの治療には補聴器やお薬、そしてTRTなど、
患者さんの耳鳴りの原因となる病気や状態を把握した上で、
しっかしと治療方法を考えることが大切です。
そのため、耳鳴りの専門外来にて一度ご相談をされることがおすすめです。
全国の耳鳴り専門外来を解説している耳鼻咽喉科は、
こちらのWebページにて確認することができます。
ぜひ、TRTが気になるという方は一度専門外来にご相談を!