【きこえと障害】聴覚情報処理障害(APD)を分かりやすく解説します

聴覚情報障害とは?

聴力は正常だけど聞き取り困難?

聴覚情報障害とはなんでしょうか。みなさんは聞いたことがありますか?

この障害は遺伝や病気により耳および聴覚神経の機能がうまく動作しなくなるのではなく、
あくまで耳の機能は正常であるにもかかわらず、「聞こえない」障害です

医学的には、外耳・中耳・内耳に器質的(物理的に特定できる)な障害を認めないにも関わらず聞き取りにくさを訴える症状があります。

同様の症状には、機能性難聴があります。その中でもストレスが原因であると明らかなものは心因性難聴と呼ばれますが、すべての機能性難聴がストレスからなるとは限らないことに注意すべきです。

なお、繰り返しになりますが、この聴覚情報障害とは、感音性難聴(蝸牛にある感覚細胞(有毛細胞)の欠損や損傷が原因)・伝音性難聴(外耳から中耳までの損傷等が原因)難聴の両方とも異なります。

このような症例はしばしば感音性難聴と誤診され、不要な治療が施されたり、不適切な診断書が発行されることも少なくないとされています。

原因は不明です。中枢神経システムの障害や脳の損傷が原因であると推定されていますが、あくまで聴覚情報障害は何らかの原因によって生じた一つの症状であるという見方がされてます。

脳損傷による影響としての教義のAPD

「聴力検査では正常なのに聞き取りにくいなんて聞く努力をしてないからだ!」

そう思われる人もいるかも知れません。しかしそれは誤りです。

聴力が正常ということは、耳やその奥の構造そのものには問題ないのですが、
音というのは最終的には脳で知覚するので、脳機能に障害があると、
当然「音」がわからなくなると考えられます。

よって「脳の聴知覚機能が低下することによって言葉が聞き取りにくくなる」
ということは医学的には普通に考えられることなのですね。

例えば何らかの理由で脳が損傷した場合、
多くは雑音下において脳損傷の反対耳の聞き取りが困難になります。
こうした症例は日本では相葉(1986)によって報告されています。

脳損傷が認められない広義のAPD

また、脳の損傷が認められなくても認知機能で何らかの機能障害が認められる場合もあります。

脳の内部については詳しくはよくわかっていませんが、
背景には認知科学・心理学における情報処理、ワーキングメモリとの関連が深く、
注意や記憶のプロセスと密接に関係していると考えられます。

これらからAPDと聴覚障害というのは似て非なるものであることがわかりましたでしょうか?
なお、一般的な感音性難聴と伝音性難聴については下記の記事も参考にしてください。

聴覚障害の定義・その種類はどれくらいあるの?

聴覚情報障害の主な症状

小渕(2015)によるとAPD疑いに見られる聴覚症状とその機能は以下の通り整理されています。

聴覚症状 聴覚機能
聞き返しや聞き誤りが多い 聴覚識別
雑音など聴覚環境が悪い状況下での聞き取りが難しい 雑音化での聴取
口頭で言われたことは忘れてしまったり、理解しにくい 聴覚的記銘
早口や小さな声などは聞き取りにくい 劣化音声の聴取
長い話になると注意して効き続けるのが難しい 聴覚的注意
資格情報に比べて聴覚情報の聴取や理解が困難である 視覚優位

APD児は聴覚障害児よりも発生率が高いことが知られています。

APD疑い児を対象に聴覚検査、発達検査などを行った結果、「背景要因の半数以上は自閉症スペクトラム(ASD)や注意欠陥多動性障害(ADHD・ADD)などの発達障害であり、その他にも精神疾患や心理的問題、複数言語環境下でのダブルリミテッドの問題などの多様な要因があり、これらに加えて本人自身の性格特性や聴取環境が加わり、聞き取り困難が生じていることが考えられ」るとされています。

同様の症状が現れる機能性難聴については、小泉らによると「10歳前後の前思春期の女児に多く、両側性の水平型感音難聴というのが典型的な聴力像」とされ、以下のような場面で聞き取りにくいという症状が現れます。

  • 多人数が話す場合など騒音下で音を聞き取りづらい
  • 音声提示された指示に対するしたがいにくさ
  • よく似た言葉の弁別しにくさ
  • 歪みのある語音の認知がむずかしい

その他、言語や認知に関しては特別の症状を呈さないことが知られています。

小児にみられるAPDの疑い例

ただ、APD疑い児とされていた中には軽度中度難聴が見逃されていたケースもあるそうです。
聴力検査という状況下では検査時の音の提示を予想して回答することは決して珍しくありません。

実際にみみなびのメンバーの中にも本来は聞こえないはずの聴力レベルにおいて、
検査員の手元を見ることで予想して解答したという経験を持つ人もいました。

親の心配や「早く検査を終えたい」という心理的な状況から、
そうした反応を示す子供もいるということを念頭に入れて聴力検査を行わなければいけませんね。

成人に見られるAPDの疑い例

成人においてもAPD疑いで来院した患者のうち74%が発達障害と診断されました。
仕事上のストレスなどを受けやすい働き盛りの20代から40代に多く見られるそうです。

聴覚情報障害への介入方法

現在のところ医学的に統一した見解は確立していません。

しかしながら、学習障害や言語発達の障害を予防するために以下の方法があります。

  1. ノイズを低減する(騒音の抑制)
  2. シグナルを改善する(FM補聴器やスピーカーの使用)
  3. 音声以外の代替方法を用いる

また、心理学的な支援方法も有効である場合があります。その場合は臨床心理士等と協力しながら認知行動療法などの療法を模索します。

まとめ

聴覚情報障害はまだ十分に解明されている障害ではありません。しかしながら機能性難聴と診断されている人の中には、詳しい検査により聴覚情報障害であると判定される人も少なくはないのではないかと考えられます。

日常生活を過ごす上では、騒音の抑制、補聴器等の使用、文字情報の使用などを活用しながら、心理的な面からの支援も必要です。

この聴覚情報障害の原因は明らかにされていませんが、近年、脳の画像診断で聴覚情報障害のある人は脳の一箇所において血流の低下を示したなど新しい事実も解明されています。

今後、より一層の科学の発展と難聴者を支援する環境づくりが望まれます。

参考文献

参考 機能性難聴と聴覚情報処理障害一般社団法人日本言語聴覚士協会 参考 機能性難聴143例の臨床統計JSTAGE Otology Japan 参考 聴覚情報処理障害(APD)についてJSTAGE 音声言語医学 参考 聴覚情報処理障害(APD)が生じるメカニズムレデックス株式会社 参考 聴覚情報処理障害(auditory processing disorders, APD)の評価と支援医中誌Web

1 COMMENT

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です