騒音下で聴力が低下する「隠れた難聴」を知ってますか?

聴力検査ではわからない「隠れた難聴」

近年「隠れた難聴」に悩む人が増加傾向にある

隠れた難聴(Hidden Hearing Loss)とは、
バックグラウンドノイズの中で音声を聞くことが困難である難聴です。

患者は「周囲がうるさいなかで聞こえにくい」と訴えて、
クリニックを訪問するのですが、一般的な聴力検査では正常値が出ます。

もちろん、ここで聴力低下がわかった場合は、
患者さんもある意味では安心して治療に専念するわけですが、
一般的に「隠れた難聴」では聴力低下が見られないことが多いのです。

参考 聴覚研究者が語る、音のパーソナライズ化で「脳」に起きる変化 “音のパーソナライズ化”がもたらすもの【第2部:柏野牧夫NTTフェロー】ニュースイッチ 日刊工業新聞

日常的などの場面で隠れた難聴に悩むのか

隠れた難聴では、複数音から特定の音を聞き分ける能力が下がります。

例えばまちなかのカフェでの会話や、学校など騒がしい環境下で、
話し相手や講演者の声が聞き取りづらくなります。

隠れた難聴ではない健聴者でも騒音レベルが高ければ、
当然、特定の声は聞こえなくなります。

しかし、一般的な健聴者が聞こえる環境下で聞き取ることが難しく、
それを本人が聞き取るのに非常に努力を強いられる場合は、
隠れた難聴であると言えるかもしれません。

この隠れた難聴では静かな環境における小さな音は聞こえます。
そのため一般的な聴力検査では正常と診断されます。

隠れた難聴の割合はどのくらい?

正常なオージオグラムを持つ患者さんで、
騒音下で音声を聞くことが困難であるということは実は珍しくありません。

一般的なには聴力障害を自覚している患者の約5〜7%で、
純音聴力検査が正常であると言われているのです。

また、聴覚処理障害の疑いの評価のために、
専門の聴覚学クリニックに紹介される大多数の子供と成人に、
この隠れた難聴が見られます。

つまり、聴覚情報処理障害との関係性が考えられます。
聴覚情報処理障害(APD)についてはこちらの記事で、
日本語の関係する研究等をまとめています。ご覧ください。

【きこえと障害】聴覚情報処理障害(APD)を分かりやすく解説します

隠れた難聴の原因は何?治療法はあるの?

「隠れた難聴」という用語は、もともと研究者の間で、
騒音曝露に関連する蝸牛神経シナプスに機能障害のある患者を指していました。

「蝸牛神経シナプス」の最初の発見は、
騒音曝露の既往があるにもかかわらず、聴力図は正常だった患者の
臨床研究によって確認されました。

現在では、隠れた難聴を診断するためのテストには、
様々なリスニング環境での騒音曝露と聴力に関するアンケート、
従来の聴力測定および高周波での純音聴力検査、
語音聴力検査、耳音響放射や脳幹反応、
Tiptrode electrodeによる測定などが用いられます。

日本では隠れた難聴について臨床的な報告が少ない

アメリカのように聴覚専門クリニックがない日本において、
聴力について相談できる環境は限られています。

一部の大学病院等では聴覚情報処理障害を始めとして、
耳鳴りや補聴器外来を設けて総合的な難聴支援を図っていますが、
やはり大病院ということで敷居が高くなってしまいます。

日本においてもヘッドフォンやクラブ等における、
長時間の騒音曝露によって若年層にも隠れた難聴に悩む患者さんは多いでしょう。

まだ、世界的にも研究が進められておらず、
明らかにされてはいませんが、今後日本でも専門的な外来等ができるかもしれません。

出典

今回はアメリカのオーディオロジストJames W Hall氏の記事を参照しました。

Hall, James W. “Hidden hearing loss: an audiologist’s perspective.” (2017): 6.

有毛細胞と蝸牛神経シナプスが最も騒音に対して脆弱であることを、
明らかにした研究はこちらです。
高リスク群では高周波での聴力が低下していることがわかりました。

Liberman, M. Charles, et al. “Toward a differential diagnosis of hidden hearing loss in humans.” PloS one 11.9 (2016): e0162726.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です