米国の大規模調査による補聴器を装用しない高齢者の要因は?

難聴の高齢アメリカ人における補聴器使用の決定要因

補聴器が届かないのはどこの国でもお金と見栄の問題?

ミシガン大学の研究者の研究によると、
米国の大規模調査によるデータセットの分析を行った際に、
補聴器の装用率は以下の要素に影響されていることがわかりました。

  • 年齢が若い人
  • 非白人
  • 低所得
  • 低学歴の個人

年齢がそこまで年をとっていない難聴者は補聴器の装用率が下がります。
日本でも軽度難聴者は補聴器を使わずに生活している人が多いですね。

また、黒人やヒスパニック系の人種での補聴器装用率が低いようです。
この要素は次の「低所得」「低学歴の個人」と関係してきそうです。

日本では人種による様々な差別や生活水準の違いなどは、
あまり取り上げられることは無いのですが、
米国では「アファーマティブ・アクション」と呼ばれる制度があるように、
人種によって人生の難易度が変わることが大きな議論になります。

大規模調査を用いて補聴器ユーザーの属性を分析することによって、
「金銭の問題」が影響していることは私達も実感できるとことですが、
その背景にはアメリカならではの人種問題があると考えられます。

例えば、低所得者は人種差別や生活水準の問題に起因していますが、
差別を受けることで肉体労働や単純労働に従事しやすく、
コミュニケーションを必要としないために、
補聴器の利用も必要であると感じにくいと考えられます。

また、学校での学習経験が乏しいことによって、
自身の健康状態を自覚したり、問題を解決するための学習をすることができず、
必然的に補聴器の必要性を認識することもまた難しくなります。

日本では全く違った分析になると思いますが、
同様の調査を日本でも実施することができれば非常に興味深いですね。

その他の補聴器の利用を阻害する原因

今回の米国の研究によれば、居住地域(都市部など)は、
補聴器使用と有意に関連していませんでした。

また、実際のインタビューによる分析によると、
補聴器の利用を阻害する要素として費用、汚名、虚栄心、
医療提供者による補聴器装用の低優先度が挙げられました。

また、補聴器の利用には家族や友人のサポート、
補聴器や難聴に関する知識、および補聴器購入のための適切な保険が挙げられます。

なお、大学教育を受けた人では45%以上が補聴器利用していました。
しかし、高校を卒業していない人では29%にみたないことがわかります。

さらに、所得が最も低い層では、最も高い層に比べ、
補聴器の使用率は25%程度と低かったとしています。

人種と学歴、そして所得は関係しますので、
これらの要因はぐるぐると複合的に混ざり合って、
このような結果が導かれていることがわかります。

補聴器の利用に至るまでには多くの社会経済的要因がある

このように、多くの社会経済的要因が補聴器利用と個人の能力を妨げています。

しかし、どうすれば多くの人に補聴器が利用されるでしょうか。

研究では保険プランが適切な補聴器補助を提供したとき、
そして、家族/友人が補聴器使用を奨励したときに一部緩和される
といいます。

アメリカの場合、戦争で聴力を損傷した退役軍人には負担が少ないとされます。
実際、55~64歳における補聴器の使用率は退役軍人でない人の2倍でした。

また、家族や友人が補聴器の利用者であったり、
利用を勧められたりすることが購入のきっかけになっています。

こうした視点は日本でも十分検討することができるのではないでしょうか。

ちなみに米国の補聴器装用率は、ヨーロッパ諸国よりは低いものの、
日本よりは普及が進んでいると言えます。

補聴器の自己負担額は2,000~7,000ドル(約23万~79万円)と高額にも関わらず、
高い満足と普及が進んでいる点は、より詳細な研究が必要です。

なお、補聴器の普及率と利用者の満足度は以下のとおりです。

McKee, Michael M., et al. “Determinants of hearing aid use among older Americans with hearing loss.” The Gerontologist(2018).

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