実際、日本の補聴器ユーザーの満足度はどの程度なの?

補聴器の満足度調査結果はなぜ大きく異なる?

日本補聴器工業会の調査と日本聴覚医学会総会・学術講演会調査結果の比較

補聴器の満足度調査としては日本補聴器工業会において、
Japan Trackという調査が毎年実施されています。

ここでは2018年の補聴器利用者の満足度は38%と報告されています。

一方で、一般社団法人日本補聴器販売店協会会員総数約 1000 店に対する、
地域ごとの加盟店割合に応じて抽出した 300 店に依頼したアンケート結果では、

両耳装用及び片耳装用とも「まあまあ満足」との回答 が最も多いと報告されています。

満足度の割合では「大変満足」と併せると両耳装用では90.9%、
片耳装用では90.0%であり、いずれも装用者の約90%が満足していたという報告があります。

調査方法についてはJapan TrackがAnovam社が日本の調査会社と共同で実施し、
福澤ら(2013)では補聴器販売店協会の店舗を対象に実施したとしています。

調査方法の違いによって補聴器装用満足度は大きく変わる

日本補聴器工業会がAnovam社に依頼し実施した調査では、
以下のとおりサンプルの抽出がされていると明示されています。

  1.  全人口を反映する厳格な割り当てサンプルの抽出 (年齢・性別のバランス、地域の分散)
  2. 4万人を超える調査名簿から選出
  3. 選別アンケート: 自己申告による難聴の程度、補聴器使用状況と人口動態
  4. 結果: 人口調査に基づいた 基数:13,710 人の代表サンプル

特に近年広く行われるインターネット等を利用した調査の場合は、
インターネット利用者の属性を反映することから、
サンプルが偏る可能性が指摘されています。(ネットを使える若者、所得が高い人など)

そのため、全人口を反映するサンプルの割当は非常に重要です。
難聴者は高齢者が多くを占めると考えられるためその数をおおよそ推計した上で、
母集団をある程度作ることが必要になるでしょう。

最終的に補聴器所有者は421人とアンケート対象者のうちの3%程度となっています。
日本の人口を1億2千万として3%は360万人ですから、
2018年補聴器出荷台数約60万台の6年分と考えるとある程度妥当と考えられます。

この母集団における補聴器の満足度は38%という結果になっており、
この満足度を受けてか「購入した補聴器の販売店又は販売員を友人・知人に紹介する気持ちは少ない」
という調査結果が出されています。

71%の補聴器利用者が補聴器専門店で購入しているにも関わらず、
そのうちの58%は購入した店舗や店員をあまりおすすめしないと答えています。

また、補聴器専門店で購入した場合の満足度は45%とされており、
めがね店さんや通販で購入した場合は満足度はさらに低下する
ことが明らかにされています。

一方で一般社団法人日本補聴器販売店協会会員に依頼して実施したアンケートでは、
片耳装用であっても90%という高い満足度を得ているとしています。

しかし、この調査では店舗に対して「店舗当たり 20 枚を目標」として依頼しており、
店頭で店員からユーザーに依頼する形でのアンケート回収をしているため、
利用者の本音がアンケート結果に反映されにくかった可能性があります。

よって、実際の満足度はJapanTrack2018で調査された、
補聴器専門店においては45%という調査結果のほうが厳密と考えられます。

補聴器利用者のその他の要素に関する満足度を分析

補聴器は両耳装用のほうが満足度が高いというのは事実

福沢ら(2013)では「大変満足」のみの割合を見ると、
両耳装用者の方が約10%大きかったと報告されています。

このJapanTrack2018においても同様のアンケート結果が示されており、
両耳装用は「全体的満足度の高さ、一日当たりの使用時間の長さ、
いわゆる“タンス補聴器”の比率の低さにおいて、両耳装用は片耳装用を凌駕している」
と報告されています。
こちらでも両耳装用者の満足度は42%となっており片耳装用者の満足度25%を上回ります。

さらに福沢ら(2013)では「50 dBHL 以下」は、
片耳装用の割合がやや高かったと報告しています。

しかし「50~90 dBHL」では,両耳装用の比率がやや高かったのですが、
今回の結果からは何れの場合も僅差であり確かな理由は見出せないと報告しています。

片耳装用の理由についてはやはり購入費用が負担に感じている方が多いと感じます。

「中等度後半から高度難聴の場合は両耳装用の方が日常会話に有利」とはいえ、
補聴器でも1台15万円程度することを考えると何かと理由をつけて、
片耳装用を選択する利用者は決して少なくないでしょう。

補聴器利用者の平均年齢は78.2歳

JapanTrack2018において75歳以上の補聴器利用者は8%でした。
補聴器利用者として考える際はシニアが主な対象になるのは明確です。

福沢ら(2013)によれば回答者の平均年齢は 78.2 歳と報告されており、
「70代後半」という年齢層は補聴器ユーザーの年齢としては妥当でしょう。

なお年齢,年齢区分や性別による両耳装用と片耳装用 の差はほとんどなく、
職業を持っているか社会的活動に携わっている人の方が、
両耳装用を選択する傾向がある
としています。

また政令指定都市・特別区といった大都市に住む難聴者に両耳装用の割合がやや高い傾向があります。
これは米国での研究によっても指摘されているように、
都市部と地方の所得格差が主な要因になっている可能性があります。

米国の大規模調査による補聴器を装用しない高齢者の要因は?

両耳装用のためには補聴器の有用性周知や満足度向上が必要

聴覚医学の観点からすれば両耳装用の方が望ましいとされますが、
実際のところ高齢者の補聴器ユーザーとしては、
価格相応のメリットを理解することが難しいのではないでしょうか。

補聴器専門店で購入した場合の満足度ですらJapanTrack2018では45%であり、
その他の購入経路の場合は、友人知人に紹介することが無いレベルで低満足です。

残念ながら現在のところ補聴器に対しては「仕方なく付ける」というもので、
補聴器専門店からもユーザーに説得力の高い販売ができていません。

研究では来店前に片耳装用を決めてくるユーザーも少なくないと報告されており、
費用とメリットの面から、そして将来的な満足度への影響を知らずに、
販売店側も販売せざるを得ない状況が続いていると考えられます。

また、75歳以上の高齢者は年金生活者であり、
十分な可処分所得が無いことが考えられます。

結果的に片耳装用でなければ手に入れることができないという可能性があります。
この場合、政策的な補助が必要であることは言うまでもありません。

参考 我が国における補聴器の両耳・片耳装用に関する実態調査Audiology Japan

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