【疑問】世界中の聴覚障害者の人数って?WHOによる調査結果を見てみた

世界には何人の聴覚障害者がいるか知っていますか?

WHOによる難聴に関する事実

WHO(世界保健機関)によるろうの定義

ろう(deafness)とは片方または両方の耳から、
聞こえる能力が完全に失われることを意味します。

これは重度の聴覚障害であり、
0.5、1、2、4 kHzで平均聴力レベルが81dB以上と定義されます。

81dB(デシベル)は「走行中の電車内」や「パチンコ店内」など、
健聴者(正常な聴力を持つ人)にとっては極めて大きな音と認識します。

ろう者(Deaf)は手話を第一言語とする、
文化的に「ろう」である人々を指しています。

これはここでいう言語聴覚学における「ろう」とは区別されます。

WHOによる聴覚障害の定義

聴覚障害(Hearing impairment)とは、
片方又は両方の耳で聞こえる能力の、
0.5、1、2、4 kHzの平均聴力レベルが26dB以上と定義されます。

30dBの音は「深夜のまちなか」「ささやき声」「鉛筆の音」くらいで、
きわめて小さな音ではありますが、
日常音として無意識のうちに知覚できる音です。

WHOによる重度難聴の定義

重度難聴(Disabling hearing impairment)は難聴より中程度、
もしくは聞こえにくい聴覚障害を意味します。

これは0.5、1、2、4 kHzにおける平均聴力レベルが
14歳以上または15歳未満の年齢で、それぞれ41 dBまたは31 dB以上の障害です。

注意

以前の記事では「Hearing impairmment」を聴覚障害、「Disabling hearing impairment」を聴覚障害者として区別しておりましたが、現在は上記の通り、軽度難聴および重度難聴として修正しています。

MEMO

湊様よりコメントを頂き、訳語について修正いたしました。

また「軽度難聴」は人工内耳、聴能訓練や口話の取得は一定の効果がある一方、
「重度難聴」は手話(sign language)が必要というWHOの指摘についてもご助言いただきました。

難聴は世界的に重大でかつ深刻な問題

世界人口のうち○%が難聴である

日本には1000万人以上の難聴者がいると推定されています。
しかし、これらの難聴者全員が困っているというわけではなさそうです。

難聴はその人と社会との関わり方や環境によって、
その障害の影響が強く出る人もいればそうでない人もいます。

また、軽度の難聴は気づきにくいので、
それをわざわざ治療するきっかけがある人は多くないでしょう。

全世界では、およそ4億 6600 万人の人々が、
日常生活に支障をきたすほどの聴覚障害でありそのうち 3400 万人が子どもです。
(より良い耳で中程度以上の聴覚障害)

難聴は騒音を避けることで回避することができる

これらの人々の3分の2は発展途上国に住んでいます。
難聴と聴覚障害の60%は回避できるとされています。

多くは周囲の騒音によるものです。

こうした感音難聴には進行性があり、より長時間、より大きなノイズを、
耳に暴露させた場合、より早期に、より重度の難聴に陥ります。

難聴予防の取り組みは進まず、コストは増大する

難聴は気づきにくい障害であり、
かつ、軽度の難聴は聞き返し等により日常的には意識されません。

しかしながら聴覚障害に費やされる世界的なコストは、
年間で7500億ドルを上回ります。

これは日本円で約80兆円です。

成人発症の難聴は、世界的な疾病負担(GBD)の主な原因の中で15位であり、
障害のある年数(YLD)の主な原因の2番目です。

YLDとはこの疾病からの経済コスト、死亡率などを加味して、
その障害や病気から失われた負担を年に換算したものです。

今後、難聴者が増えることが確実な日本においても、
早期の補聴による障害状態の軽減が必要不可欠です。

難聴がなぜ大きな障害となりうるのか

個人および社会に対する難聴および聴覚障害の影響

WHOによると特に出生時または幼児期に開始する場合、
子供の言語、言語、および認知能力の発達に対する影響が大きいとしています。

言語獲得能力の発達は学校での進歩が遅れることを意味します。
これにより職業の取得、実行、維持することが難しくなります。

また男女、すべての年齡において社会的な孤立を深めます。

途上国における言語聴覚に係る専門家は極めて不足

聴覚障害は目に見える障害、疾病ではないため、
重要視されにくいところがあります。

また保護者も聴覚障害を抱えていることに気づかないことがあります。

あるアジアの10代の少女は、生まれてから耳が聞こえません。
彼女の父親は彼女を人生で初めて聴覚専門医の下に連れて行きます。

これらの困難は、発展途上国ではますます拡大しています。
一般にそれらに対処するサービスや訓練されたスタッフが非常に少ないと指摘しています。

現状の聴覚障害に関するギャップとニーズ

日本でも聴覚障害に関する総合的な専門家は少ない

多くの場合、意思決定者、医療従事者、教師、保護者など、
社会の聴力と聴力損失についての認識が不足しています。

難聴の予防とリハビリテーションのための国家計画とプログラムは、
ほとんどの発展途上国に欠けています。

日本においても整備が進められている、
プライマリーイヤーアンドヒアリングケア(PEHC)プログラムは、
ほとんどの発展途上国で実施されていません。

聴能訓練や口話の取得など二次および三次医療プログラムは、
ほとんどの開発途上国で開発または強化する必要があります。

また発展途上国では、手頃な価格の補聴器とサービスを提供するための、
協調プログラムを設定する必要があります。

さらに多くの健康およびリハビリテーションの要員は、
一次および二次レベルでの耳と聴覚のケア、
および発展途上国での専門家のケアの訓練を受ける必要があります

高齢化に伴う聴覚障害者増による社会的影響の精査が必要

世界人口は増加の一途をたどっています。
また、平均余命の延長により、難聴と聴覚障害のある人の数と有病率は上昇しています。

これらの問題の規模を測定し、それらの個人的、社会的、
経済的効果を判断するにはより多くの情報が必要です。

特に発展途上国ではこれらの増加を防ぐ決定的な公衆衛生措置が必要です。


参考
Fact about deafnessWHO

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