【疑問】難聴や耳鳴り症状にサプリメントは効果はあるの?

難聴とサプリについて実は分かってることは少ない

明確に「サプリで難聴が治る」と書いているものは要注意

「サプリメントで難聴が少しでも回復するといいなあ」

そう思って市販のサプリメントを購入している人は多いと思います。
確かに市販のサプリの中にはなにやら難聴に効果があるような書き方をしているものもあります。

しかし、実際のところ「この物質を飲んだから聞こえるようになる」というものは見つかってません。

これまでみみなびでも紹介してきたように、
「難聴」というのは症状の1つであって病気そのものを指していません。
その難聴という症状も感音性によるものか、伝音性によるものか、その両方があります。

「突然聞こえにくくなった」という場合はすぐに病院へ

難聴症状で最も一般的なものは加齢によるものですが、
病気と併発した難聴症状が現れたときは要注意です。

おたふく風邪によって引き起こされる「ムンプス難聴」は予防接種によって、
ある程度防ぐことができますし、早期の治療によってその影響を最小限にすることができますが、
一度、ムンプス難聴になってしまうとその聴力は回復しないものとされています。

人間の体は回復するものもあれば、不可逆的なものもあるので、
自己判断をしてしまう前に一度専門のお医者さんにかかることが先決です。

難聴に効果があるとされているものの科学的な評価

ビタミンB12などのサプリと難聴への効果

さまざまなビタミンB欠乏症と耳鳴りを伴う治療法を結び付ける証拠は大部分裏付けに乏しいとされます。
ニコチンアミド(ビタミンB3)で治療された48人の患者を対象とした、
二重盲検プラセボ対照前向き試験では、結果はプラセボのものより優れていませんでした。

「二重盲検プラセボ対象前向き試験」というのは、
医学研究における実験ではもっとも客観的な研究法です。

患者の母数(人数)によってその統計的な信頼性は変わってきますが、
統計的にOKとされる人数で研究計画がされているはずですので、
結果としてはかなり信頼性は高い方であると考えられます。

また別の研究でビタミンB12が欠乏している患者さんにおいては、
慢性耳鳴りおよび騒音性難聴を訴える患者さんへの補充療法後の症状の改善が報告されています。

ただ、ビタミンB12が欠乏しているという人は特に日本ではあまり多くはないため、
一般的な健康的食事をしている場合はあまり影響はないのではないかと考えられます。

厚生労働省「総合医療情報発信サイト」http://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c03/14.html

蜂の子サプリと難聴との関係性について

ネットで検索したら「蜂の子が耳鳴りに効く」という記事を読んだけれど本当?

現時点においては、蜂の子サプリが難聴や耳鳴りに効果的な改善を示すという明確な証拠はありません

ただ蜂の子のサプリと耳鳴りについて医学的に研究された論文はあります。

確かにこの論文では、抑うつ感に関する自覚症状の緩和が見られたり、
また聴こえやすい方の耳(良聴耳)の2,000 Hzおよび4,000 Hzにおいては、
統計的に改善が認められています。しかし、その効果は12週間でわずかに数デシベルというものでした。

耳鳴りはストレス環境下でより悪化することが知られていますので、
ストレスを低減させることが効果的であると考えられます。

その意味では蜂の子サプリを服用した集団に統計的に少し変化が見られたことは事実ですが、
臨床的に効果が出ているとはっきりといいきれるほどの結果は出ていないというのが冷静な判断でしょう。

聴力は確かに数字で計測できますが、その時の精神状態が大きく影響します。
血圧を測る時になると「ドキドキ」してしまうように、
聴力検査においても「今日は聞こえるか不安だなぁ」と思うと結果に影響するでしょう。

耳鳴りもストレスが影響している可能性は以前から指摘されており、
「病は気から」というのもあながち間違いではないというところがなんとも難しいところです。

Aoki, Mitsuhiro, et al. “Effect of Lyophilized Powder Made From Enzymolyzed Honeybee Larvae on Tinnitus-Related Symptoms, Hearing Levels, and Hypothalamus—Pituitary—Adrenal Axis-Related Hormones.” Ear and hearing 33.3 (2012): 430-436.

耳鳴りや難聴へのサプリとして本当に有効なものはない

耳鳴りへの医療介入は避けるべきという専門医による見解

難聴になると耳鳴りも併発する場合が多いですよね。
実際に、みみなびメンバーにおいても耳鳴りを知覚する人もいます。

この耳鳴りは静かなはずなのに「音がなっている感じがする」ということで、
ストレスの原因にもなりますし、クオリティ・オブ・ライフを低下させる症状です。

この耳鳴りを解消するためにサプリメントを購入している人も少なくないかもしれませんね。
しかし、「お医者さんに言ってもなかなか治療してくれない」
という経験をした人もいるのではないでしょうか。

実はその診断は専門医では「正しい」判断であると言えます。
(もちろん治療方針は様々なので判断するのは患者さん自身ですが)

アメリカ聴覚医学会誌の耳鳴りに関するレビュー論文からいえること

これまでの耳鳴りに関する治療法をレビューしたアメリカ聴覚医学会誌に掲載された論文では、
1940年から2012年までに発表された記事で、医学論文を収集しているデータベースにて(国立医学図書館、米国国立医学図書館)、
「耳鳴り」という用語を含む論文を全て収集し、レビューを行いました。

その結果、せいぜいこれらの治療法のいずれかが有効であるという証拠はほとんどないと結論づけています

また、臨床医に対してはほとんどの侵襲的処置に対する患者へのリスクは、
耳鳴り知覚によってもたらされるリスクよりはるかに大きいので、
耳鳴りに対するほとんどの侵襲的治療は避けるべきであると助言しています。

耳鳴りへの効果的な治療法は補聴器や心理療法です。
耳鳴りのための効果的で非侵襲的な治療法には音響治療法(補聴器やその他の種類の環境音質向上を含む)があります。

https://ohmiminavi.co.jp/2018/07/16/miminari/

また、認知行動療法、心理カウンセリング、催眠、バイオフィードバック そしてリラックストレーニングも有用です。
市販薬または処方薬を必要に応じて使用して、睡眠を促進し、不安、うつ病、または強迫観念を軽減することができるそうです。

みみなりに悩む人は「どういった場面で困っているか」を訴えましょう

このように医学的には耳鳴りを治療する(薬物、外科的)ことによるリスクのほうが大きいので、
侵襲的な治療法はできるだけ避けたほうが良いとされています。

お医者さんもそのことを承知してあまり積極的に治療しないことが多いと思います。

しかし、日常生活において耳鳴りがあまりに支障をきたす原因になっているのであれば、
それはしっかり対応したほうが良いでしょう。

例えば「よる眠れない」や「日常的に不安を感じる」といった具体的な悩みです。
その場合は睡眠薬や心理カウンセリングによって、その悩みを解消することができるはずです。

明快な治療法がないからこそ医学的な治療だけではなく、心や体のバランスという視点から、
自分が取り組める範囲で少しずつ改善していくことが大切で、
その相談ができる先生と治療していけると良いのかもしれません。

Folmer, Robert L., et al. “Experimental, controversial, and futuristic treatments for chronic tinnitus.” Journal of the American Academy of Audiology 25.1 (2014): 106-125.

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