【News】沖縄に静かな空はよみがえるのか?住民の騒音と難聴と補聴器の悩み

沖縄に静かな空はよみがえるのか?住民の騒音と難聴と補聴器の悩み

嘉手納爆音差止訴訟とは?

戦闘機騒音について地元住民が国を相手取った訴訟

ぷよし田

嘉手納基地ってどこにあるの?

嘉手納基地は沖縄県の真ん中あたり、北谷町、嘉手納町、
沖縄市、那覇市にまたがるアメリカ空軍基地です。

30年以上前から続く騒音問題とその判決

沖縄の米軍基地問題は大変政治的に難しい問題です。

そして、本土と沖縄で大きな温度差がある問題でもあります。
この訴訟も長らく現地住民から継続して問題提起されてきました。

なんと今回の訴訟は第3次訴訟になりますが、
もともとの第1次訴訟は1982年に提訴されたことに始まります。

当時の現場検証では戦闘機騒音により最大で115dBを計測しました。
115dBはクラクションより大きく、重度の難聴者でも気づくほど大きい音です。

第1次訴訟では控訴審(高等裁判所)において飛行差し止めは却下、
過去分の損害賠償が認められましたが、健康被害は認めなない判決となりました。

住民への健康被害の有無が論点となった第2次訴訟

第2次訴訟では住民への健康被害が論点となりました。
原告側は8人が爆音による騒音性難聴であると主張しました。

このときの現場検証でも最大値104dBが計測されています。

控訴審において損害賠償請求は認められましたが、
座間味地域以北の地域については認められませんでした。

飛行差し止め請求、健康被害、予備的請求、
アメリカへの請求についても棄却されました。

判決においては、国に対して騒音状況改善を図る政治的義務があると指摘しつつ、
飛行差し止めという形での司法的救済は「閉ざされている」としました。

第3次訴訟では差し止めと新たな損害賠償請求

この嘉手納基地騒音訴訟は現在も続いています。
昨日、第3次訴訟の控訴審判決が出されました。

その結果、同様に損害賠償請求は認めたものの、
飛行差し止めは訴えを退けています。

補聴器装用者と騒音の難しい問題

補聴器は「意味のない音」までよく拾ってしまう

補聴器利用者の方はほぼ全員同意することですが、
補聴器を使うと会話やサイレンなど必要な音が聞こえるようになるだけでなく、
日常生活のちょっとした雑音までよく聞こえるようになります。

人間の耳もそうした小さい音はよく聞こえてはいます。
しかし、必要ない音は無視できるように脳が処理するのです。

難聴者の場合はあまり聞こえていない状態だったところに、
雑音が増幅されて入ってくるので、最初はうまく雑音を無視することができません。

そのため「補聴器を付けているとうるさい」と感じるのです。

なので、しかし生まれつきの難聴者や幼少期から補聴器に慣れている人は、
日常生活で補聴器を付けていてもあまり気にならなくなります。

飛行機の騒音はそもそも健康に害を及ぼす音

沖縄の嘉手納基地周辺のように飛行場の騒音は、
健聴者であっても健康に害を及ぼすほどの騒音になります。

WHOのガイドラインによれば、特に夜間の騒音は、
40dBを下回るレベルにするために政策立案者が適切な措置を実施することを推奨しています。

平均的な騒音曝露については、GDG(WHOガイドライン開発グループ)は、航空機によって生成される騒音レベルを45 dB Lden未満にすることを強く推奨します。これは、このレベルを超える航空機騒音が健康への悪影響に関連するためです。

夜間の騒音暴露については、夜間の航空機騒音が睡眠に悪影響を与えるため、夜間に40 dBを下回る夜間に航空機が発する騒音レベルを下げることをGDGは強く推奨します。

健康への影響を減らすために、GDGは、平均および夜間の騒音曝露のガイドライン値を超えるレベルに曝露した人口の航空機からの騒音曝露を減らすために、政策立案者が適切な措置を実施することを強く推奨します。

特定の介入については、GDGはインフラストラクチャに適切な変更を実装することを推奨しています。

Environmental Noise Guidelines for the European Region – Executive summary (2018)

 

損害賠償は、違法な行為により損害を受けたものに対して、
損害の埋め合わせをするものですから、
判決では裁判所は国が適切な措置を取っていないと指摘したということになります。

また、アメリカ軍(米国)に対する飛行差し止め請求というと原告側の住民が、
大きな請求をしているように感じる人もいるかも知れませんが、
実際の生活上、騒音による影響は深刻な害を及ぼすことが明らかです。

こうした空軍基地の騒音問題はドイツやイタリア等でも起こっており、
同様に訴訟に発展したケースはすくなくありません。


参考
ドイツ・イタリアの NATO軍(米軍)基地 調査報告書日本弁護士連合会人権擁護委員会 基地問題に関する調査研究特別部会

人によって健康への影響は様々だが安心な生活を送る権利はある

特に補聴器を装用している人にとって雑音というのは気が滅入ります。

よく仕事仲間がキーボードを強く叩くとうるさいと感じたりしませんか?
掃除機や洗濯機のおとがうるさいと感じてイライラしたりしませんか?

難聴者にとってはこうした小さな雑音も大きく聞こえてしまいます。

これは補聴器の性能の問題もありますが、
脳が意味のない音をうまく処理できなくなっているからです。

沖縄の嘉手納基地の騒音は健聴者にとってもうるさい音であり、
健康に害を与える許容レベルを上回っています。

その中で、補聴器を付けて過ごすというのは大変苦しいことでしょう。
こうした状況を改善できる解決策について、
我々みみなびも考えていきたいと思っています。

最近、患者数が増えつつある「聴覚過敏」と騒音

「聴覚過敏」という症状が最近良く知られていますが、
これは日常生活において、音に過剰反応してしまうことで生じます。

最近の家は防音性も非常に高くなっているので、
すこしでも音が聞こえると「うるさい」と感じてしまいやすいのです。

また、ストレスが大きい中で心を落ち着かせたいにもかかわらず、
いろいろな音が聞こえてくるとよりストレスになります。

うまく気晴らしができる方法をもっている人であれば、
ストレスを避けることができるかもしれませんが、
そうでない人にとって「音」がストレスになりつつあるのです。

耳鳴りについても同様に大きなストレスの種に感じる人も少なくありません。
ストレスをいかに回避するか、これは現代人にとって重要な問題でしょう。


参考
基地爆音、補聴器が増幅 北谷町・今さん感覚、体験を絵本に /沖縄毎日新聞

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