【解説】聴覚障害者の日常生活と悩みごとって?手帳や免許はどうしてるの?

聴覚障害者の日常生活と悩みごととは?障害者手帳から目覚まし時計・自動車免許まで解説します

日本には身体障害者手帳が交付されている聴覚障害者は約30万人います。
これまでの生活で聴覚障害者と接したことがない人も多いかもしれません。

日常生活においてあまり馴染みがない聴覚障害者について知ってもらうため、
聴覚障害者の一日を通して日常生活において困っていることや、
聴覚障害者が仕事上でどういった課題を抱えているかをご紹介いたします。

聴覚障害者は一般的にはどの人を指すの?

身体障害者手帳を持っている聴覚障害のある人

日本の法律では、聴覚障害者は身体障害者手帳を交付されている者であるとされます。

その判定基準は、最も軽い身体障害者手帳6級に該当するものでも、「両耳の聴力レベルが70デシベル以上のもの)もしくは一側耳の聴力レベルが90デシベル以上、他側耳の聴力レベルが50デシベル以上のもの」と規定されています。

軽いと言ってもこの聴力は日常生活において、補聴器等なしでは会話が難しいと考えられるレベルであることから、身体障害者手帳を持っている聴覚障害者は重度の聴覚障害を持つ障害者であるといえます。

障害者手帳を持っていない聴覚障害のある人のほうが多い

現実には手帳交付基準に該当しないものの、
医学的には聴力が落ちているとみなされる聴覚障害者のほうが多いです。

つまり、法律における「身体障害者」を定義するにあたり、
障害の程度に応じて身体障害者手帳の交付基準を定めていますが、
この基準に該当しない聴覚障害者のほうが多く健聴者と同様の日常生活を送っています。

身体障害者手帳交付基準に達しているが手帳未所有という人も

また交付基準に達している身体障害者でも様々な理由で手帳を所有していない人がいます。

特に中度の聴覚障害の場合、ある程度大きな音や声であれば聞き取れる場合がありますし、長年聞こえづらい耳をかばうように自然に読話(唇を読む)のスキルを身に着けていたりするので、日常生活にさほど大きな困難を感じていないケースもあります。

特に後天的な聴覚障害の場合は、障害者として差別されることへの恐れや、これまで聞こえてたにもかかわらず聞こえづらくなった不安から、聞こえにくいと感じても手帳を申請しない人もいます。

しかし、職務上障害者としても職務遂行は可能である場合は当然、手帳の有無によって職業差別をすることは禁じられています。

また、公共交通機関や補聴器等の補助が受けられるなど手帳を取得することによるメリットもあるため、聴覚障害者として身体障害者手帳の交付基準に該当するのであれば交付を受けることをおすすめします。

身体障害者手帳申請の手続きは簡単

身体障害者手帳申請については以前にOh!みみなびでも記事にしていますので御覧ください。

【解説】聴覚障害・難聴の方の身体障害者手帳申請の手続きって?

参考までにこちらにも簡単な身体障害者手帳申請手続きの流れをご紹介します。

STEP.1
用紙入手
住んでいる市町村の障害福祉担当窓口やインターネットのページから「身体障害者診断書・意見書」を入手します。
STEP.2
指定医の診察
指定医の診察を受け、交付基準に該当する場合「身体障害者診断書・意見書」を記入してもらいます。
STEP.3
交付申請
医師の意見書を添えて、住んでいる市区町村の障害福祉担当窓口に申請します。
STEP.4
結果通知
審査が行われます。結果は数カ月後に通知されます。
STEP.5
手帳受領
住んでいる市町村窓口で手帳を受領します。

聴覚障害者の一日の生活で困ること・健聴者が気づかないこと

聴覚障害者は目覚まし時計が聞こえない

聴覚障害者は朝一番から困ることがあります。それは「めざまし時計」が聞こえないことです。
そのため、多くの聴覚障害者の方は「ベッドシェイカー」という振動する目覚まし時計を持っています。

最近ではスマートウォッチを身に着けて時間になると振動させている人もいます。

聴覚障害者の方におすすめの目覚まし時計については以下の記事でも取り上げられています。

おすすめの目覚し時計はこちらへ
【体験談】独り暮らし聴覚障害者の目覚まし事情

聴覚障害者は家電のアラームやブザーが聞こえない

さて、朝食の準備をするため電子レンジを使います。
今日は寒いので牛乳を温めてホットミルクにしたいと思い、レンジにマグカップを入れました。

1分後牛乳が温まったことを知らせるブザーが鳴りますが、
聞こえないのでちゃんとレンジに入れたことを覚えておかなくてはなりません。

以前、Oh!みみなびコラムでも、冷蔵庫を開けっ放しにしたときもブザーが鳴りますが聞こえないという4コマ漫画がありました!

【4コマ漫画】Vol.9 疑心暗鬼

補聴器を付けるとちょっとした物音がうるさい

さて、補聴器を付けると、家族が家を出ると同時にゴミ出しをしようとゴミ袋をガサガサしています。
これも聴覚障害者にとってはとってもうるさいのです(笑)

紙が擦れる音も、ビニールのガサガサも、普段健聴者の方が寝ようとしてる時にこういう音があるとうるさくて眠れませんよね。これと同じで聴覚障害者の多くは補聴器もしくは人工内耳をつけているので、日常音も大きく拾ってしまうのです。

電車の遅延情報のアナウンスが聞こえない

急いで家を出て電車に乗りますが、途中の駅でしばらく停車しているようです。
「何が起こったのかな?」と思いますが車掌さんの放送が聞こえませんでした。

仕方ないので会社に遅れることを伝えてそのまま電車に乗っていましたが、他の人はそそくさと別の路線を使って移動していきました。

以前、コラムの4コマ漫画でも同じような話がありました!

【4コマ漫画】Vol.5 緊急停車、何があったの?

聴覚障害者は後ろから呼びかけられると聞こえない

会社について席に座って一息、と思ったがつかの間後ろから上司に呼びかけられました。
遠くから声かけてくれたみたいですが気づかずに結局肩を叩いてすぐそこまで来てくれました。

レストランや居酒屋など騒音があるところでの食事は気を使う

午前中の仕事を終えてランチタイム!

同僚のみなさんがランチに誘ってくれましたがお断りしてしまいました。
実はすこし騒がしいレストランや居酒屋ではほとんど会話が聞こえないのです。

同じ人が喋っていて会社では聞こえても、騒がしいところでは騒音も同じくらいの大きさで聞こえてしまうためです。本当は一緒にごはんに行きたいという気持ちも無くはないのですが、お互い気を使ってしまうのでいつも行けません。

店員さんの説明が聞こえないので買い間違える

就業後、会社帰りにお買い物をしようと百貨店に行きました。

デパートでかわいい洋服を見つけました。店員さんは何か言ってますが聞き取れませんでした。
お店ではイエローのスカートを買いましたが、家に帰ってネットで調べてみると大好きなピンクもあったことに気づいてしまいました…

実は店員さんは「ピンクもあるからもし宜しければ取り寄せますよ」と教えてくれたのですが、遠慮して聞き返せず流してしまったのです。こういうことは良くあるのでがっかりしても仕方ないと気を取り直します。

友達との食事は幹事を引き受けて静かな個室を選ぶ

今日は友だちとご飯なので、事前に個室のある居酒屋を予約しました。
できるだけ聞こえやすくするために進んで幹事を引き受けて個室のあるレストランを探します。

補聴器をつけていても聞き取りは難しいので神経を使います。そのためいつも帰宅後はくたくたになってしまいます。また、あまりに聞き返しが多いと友達も疲れてしまいます。

事前に自分が聞きやすい環境をつくることでお互い気を使わないようにしています。

聴覚障害者でも普通自動車免許は取得できる

自動車の運転免許は聴覚障害者であっても健聴者と同じように取得できます。

ただし、補聴器を用いて10メートルの距離で警音器聞こえることが普通の車を運転できる要件です。それ以上の聴覚障害者の場合はワイドミラー又は補助ミラーをつけて聴覚障害標識を付けることが義務になっています。

聴覚障害者にはバイクに乗ることが趣味な人も多くいます。インカムなどは使えませんが、逆に手話が使えるので停車中もコミュニケーションを取ることができます。

就寝前はベッドシェイカーを設定して寝る

明日は旅行なので早めに解散して、準備をします。
旅行のプランをワクワクしながら考えて眠りにつきます。
ちゃんとベッドシェイカー付きの目覚まし時計をセットしておやすみなさい!

聴覚障害者の悩み事

やはり一番の悩みは周囲の人とのコミュニケーション

聴覚障害者の一日を振り返って、物音がきこえないことで困る場面が多数出てきました。

電話の呼び出し音やインターフォン、そして冷蔵庫のアラームに目覚まし時計などなど生活には様々な音が使われていますよね。しかし、技術の発達により、こうした信号は別の感覚を使うことでカバーできることも多いのです。

しかし、これからも解決が難しいと考えられること。それは人と人とのコミュニケーションなのです。

例えば、「声が音としてきこえていても何を言っているかわからない」と言う意味がわかりますか?
聴覚障害者にしかわからない感覚を健聴者が理解することは非常に困難です。

聴覚障害者側が理解してほしいと願っても到底ムリな話なのです。ろう者の方が手話通訳士の方を強く求めるのも、こうした場面で思うように通じなかったり、誤解が生まれてしまいがちだからです。

聴覚障害者だからコミュニケーションができないというわけではない

聴覚障害者と一言に言っても、生まれつきの重度難聴で手話のみで他人との交流を図ってきた人、生まれつきの重度難聴で残存聴力を活かし、口話のトレーニングを受けた人とでは同じ聴力レベルであってもコミュニケーションできるレベルが大きく異なります。

したがって聴覚障害者だからこうだという決めつけは、その人本来の個性を間違えて捉えてしまったり、差別やレッテル張りになりがちですので注意が必要です。

人によって障害の程度が違うのは当然ですが、残念ながら等しく受けられるべきはずの教育や支援についても、現時点では全国的には大きくレベル差があります。

都市部では聴覚障害教育の専門家がいても、地方では専門家が少なく十分な難聴児教育が提供できないという状況があります。

そのため人によって受けてきた教育や能力が大きく変わってくることは不思議ではありません。

この点を理解して一人ひとりと接することが一番大切ですが、大多数の日本語話者を中心に動いている社会においては、コミュニケーションという点において疎外感を抱えている聴覚障害者は少なくありません。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
聴覚障害者と言っても人によってその程度は様々ですが、一般的にはこんな毎日を送っています。

「聴覚障害があるとやっぱり大変そうだな」と思われた方も多いかもしれません。

確かに気苦労は付きませんが、多くの聴覚障害者は長い間こうした環境に置かれてますので、やり過ごし方をそれぞれの人が編み出しているようです。

そのため、聴覚障害のある当事者も無意識にやり過ごしているところがあるので、日頃どんなことに困っているのかは健聴者も聴覚障害者自信も気づかないことがあります。

Oh!みみなびは健聴の人と聴覚障害のある人が協働して、こうした「困ってるのだけど誰も気づかない問題」を解決するため、ITを用いて様々な解決策を提供するスタートアップを目指しています。

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