聴覚障害者が説明するわかりやすい「聴覚障害とは?」
あなたが想像する聴覚障害とはどんなものですか
全く音が聴こえず、補聴器をつけても聴こえないもの
補聴器をつければ、通常通り会話が出来るようになる。
他にもいろいろあると思います。
それらは、全て正解でもあり不正解でもあります。
聴覚障害とは、現代科学でも判明出来ている部分がとても小さくまだまだ未知な障害です。
「きこえる」「きこえない」だけでは表せないのです。
それだけ複雑な障害であるということを覚えていただけると幸いです。
とはいっても、
「じゃあ、どんな障害なの?」となってしまうので
出来る限りくだいてお話させていただきます。
日本の全人口における聴覚障害者の割合は
現在、日本の人口を1億人とするならば
約10%つまり1000万人の方が不安を抱えていると言われており意外にも私たちに身近な障害であると言えます。
しかもその中で、手話を使えると言われている人の割合は
13%で130万人ほどになります。
一見、13%は多いようにも思えますが残りの87%の方
つまり、870万人の方は聴こえに不安を抱えているにも関わらず手話は使うことが出来ないと言われています。
厚生労働省の調査によると聴覚障害者手帳取得者35万人のうち手話を使えるものは43,000人とされています。
おそらく13%という数字は人が手話を使えるという「聴覚障害者手帳取得者のうちの13%」が手話を用いるということであり、こちらに記載されているように「きこえに不安を感じている人すべてのうち13%」が手話をつかうことができるとは必ずしも言えません。
もちろん、聴覚障害の軽い重いはあるため
全ての方が手話を使うほど重いのかというと、そうではありませんが
聴覚障害の方みんなが手話を使えるかというとそうではないということです。
実は、この記事を書かせていただいている私自身も聴覚障害者です。
dB(デシベル)、Hz(ヘルツ)とは
ここで、dB(デシベル)と出てきますが
これは音の大きさの単位です。
ちなみにHz(ヘルツ)は周波数の単位でいわゆる音の高低の単位になります。
dBとHzは聴覚レベルを表すときに確実に必要になるものなので覚えておきましょう。
参考までにdBとHzの関係をイラストにしてみました。
(あくまでも参考として見てみてください)
このグラフはオージオグラムとよばれるものです。
ちなみに、一般的な生活音の高さは1000Hz前後に集中しており
500Hzは男の人の声、2000Hzは女の人の声くらいと言われています。
実際の聴力検査は、1000Hzから始まり
だんだんdBを上げて(音を大きくして)いきます。
聞こえたところで聴こえたという合図をしてその人の聴覚レベルを測っていきます。
130dBの時点で、なおその音が聞こえない場合はスケールアウトといって、聞こえなかったものとして扱われます。
私は、こんな感じのグラフを描いています。
1000Hzが聞こえにくい聴覚障害です。
他にもいろいろなグラフの形があります。
このように、さまざまな聴覚レベルがあり「きこえる」「きこえない」だけでは表すことが難しいのです。
さらに、この聴力レベルとは別に「明瞭度」もその人が持つ聴力レベルに関係してきます。
この明瞭度はスピーチオージオグラムというもので表すことが可能で、
これもまた検査によって測定することが出来ます。
この明瞭度と先ほどのオージオグラムによって表す事ができる聴力レベルで興味深い現象が起こります。
聴力(オージオグラム)と明瞭度(スピーチオージオグラム)の関係とは
ここに二人の男女がいます。
二人はそれぞれ補聴器無しで、平均聴力60dBと95dBという聴力レベルを保っています。
それぞれ、下記のような「あ」という音の形を持っています。
「あ」の大きさはそれぞれが持つdBを表しています。
この二人に、補聴器をしない状態で後ろから呼びかけたとき反応があるのは
当然、60dBの男の人のみが反応します。
(後ろから呼びかけたときの声の大きさが94dB以下と仮定した場合)
次に、 2人に補聴器をつけてもらいます。
それぞれ、30dBと45dBまで聴力レベルがあがりました。
「あ」の形も大きくなりましたが、形はあまり変わりません。
(補聴器によって、ノイズキャンセリングや一定のHz域だけあげるなどの機能はありますが基本その人の持つ音の形は変わらないと仮定します)
この状態で、後ろからある程度はっきり分かりやすく2人に質問をします。
すると返事があるのは、45dBの方の女の人の方なのです。
(必ずしもそうではありませんが、ここではそう仮定しております)
なぜ、このような現象が起こるのか。
それは、下記のイラストが全てを物語っています。
つまり、「音が聞こえること」と「何を言っているのか聴き取れる」ことは
また別物で、反応があるからと言って聴き取れているとは限らないのです。
残念ながら、このことはあまり理解されておらず
多くの誤解を招いていることも確かです。
少しでも、多くの方に「聴覚障害とはなにか」という正しい理解を持っていただき
互いが歩み寄れる未来を目指して。