【News】空港で働く人が航空機騒音によって聴覚障害になる割合はどのくらい?

空港で働く人が航空機騒音によって聴覚障害になる割合はどのくらい?

飛行機のジェット音による騒音性難聴とは?

騒音性難聴とは「騒音環境下に長時間曝露されることによる難聴」

皆さんは普段どんな環境で一日をお過ごしでしょうか?
耳と環境について考えたことはありますでしょうか?

静かなオフィスでの勤務であれば騒音性難聴とは無縁と思うかもしれません。

騒音性難聴は飛行場やパチンコホール、工場などで発生する、
騒音によって耳が悪くなる職業性のものが知られていました。

しかし、現代ではライブやポータブルミュージックプレーヤーによる、
長時間の音の曝露による難聴も知られるようになっています。

勤務中に音楽を聞いているあなたも知らず知らずのうちに、
騒音性難聴になりかけているかもしれませんよ…

従来、騒音性難聴をきたすような大きな音に長期間さらされる環境は
職業性のものがほとんどであった。
しかし、近年の音響機器性能ならびに携帯性の向上に伴い、
一般の生活の中でも大きな音を以前より手軽に長い時間聞くことが可能となり、
そのような生活環境では非職業性の騒音性難聴も起こりえる。
音楽など、本人にとって好ましい音を聞く場合であっても、
やはり負荷が大きすぎれば難聴を起こす危険性がある。

https://ibarakis.johas.go.jp/research/h29

 

ヘッドホン難聴はWHOも注意を呼びかける最大の難聴要因

厚生労働省によると職業性の難聴を「騒音性難聴」としています。

また、爆発音あるいはコンサート・ライブ会場などの大音響のほか、
ヘッドホンやイヤホンで大きな音を聞き続けることによって、
起こる難聴を「音響性難聴」としています。

特に後者は「ヘッドホン難聴」あるいは「イヤホン難聴」と呼ばれ、
近年、特に問題視されている
ことが指摘されています。

WHO(世界保健機関)では、世界の11億人もの世界の若者たち(12~35歳)が、
携帯型音楽プレーヤーやスマートフォンなどによる音響性難聴のリスクにさらされている
として警鐘を鳴らしているとしています。

https://ohmiminavi.co.jp/2019/09/20/hearing-aid-4/

先日取り上げた記事のコメントにおいても、
26歳の音楽好きの方がライブで騒音性難聴になってしまい、
今では字幕がないとテレビの内容が分からない程度になってしまったと書いていました。

騒音性難聴は内耳の蝸牛内部にある有毛細胞が傷つき、
死滅してしまうことが原因になり起こる症状です。

この有毛細胞はある程度までは休めることによって回復しますが、
一定以上傷つくことによって回復が不可能になってしまいます。

騒音性難聴はなってからの回復はできないが予防できる

茨城産業保健総合センターの報告書によると、
「騒音性難聴は未だに治療が困難な疾患である。しかし予防は可能である。」
と記されています。

騒音性難聴は健聴者が耳を騒音に曝露することによって起こりますが、
少しずつ進行していくため気づきにくい難聴であると言われます。

また、視力と異なり矯正することが非常に困難です。

聴力が落ちる事によって家族や友人、職場の方とスムーズに会話できず、
関係性が不安定になりお互いにストレスが溜まることもあります。

騒音性難聴になってからの治療は極めて困難ですが、
騒音環境下において耳栓やイヤーマフを着用したり、
音楽を聞く時間を一定時間に限定することでリスクは確実に軽減できます。

参考までに、日常的にインイヤーイヤホンを着用しているにもかかわらず、
音漏れしているような音量は80dBを上回ると考えられるためリスクが高いです。

WHOのアドバイスに従いこのような音量での音楽聴取は、
1日1時間程度にしたほうが良いでしょう。

空港で働く人の航空機騒音の影響について

とある空港における労働者の騒音性難聴割合は41.9%

空港は毎日多くの航空機が行き交う騒音の多い環境です。
そのため、空港内労働者はイヤーマフの着用などを義務付けられています。

しかし、実際のところ空港内労働者はどの程度難聴になりやすいのでしょうか。
Journal of Occupational Medicine誌に掲載された論文では、
112人の空港従業員において聴覚検査を実施しました。

従業員は、日々の仕事に応じて5つのグループに分けられました。
グループAは、23人の保守作業員、グループBは20人の消防士、グループCは24人の警官、
グループDは34人の航空会社地上スタッフ、グループEは14人の公務員です。

騒音性難聴(NIHL)の典型的なオージオグラムパターンは、
3または4 kHzで低下し、6〜8 kHzの周波数範囲で中程度の難聴とされます。

具体的にはいかのようなオージオグラムを描きます。

スターキージャパン株式会社 https://www.starkeyjp.com/hubfs/e-learning/001.2011.BtoB04.04.2016AWppt.pdf?t=1460113217254

今回の調査においては全従業員の高周波損失の有病率が、
41.9%であることを明らかにしました。

あくまで今回研究対象となった飛行場における騒音性難聴者の割合であり、
それぞれの国や空港によって自主的に基準を設けて対策していると考えられます。

もし、勤務先で不安に感じることがありましたら衛生管理者、
もしくは地域の産業保健衛生センターにご相談ください。

最も騒音性難聴の割合が高いのはメンテナンス従事者

騒音性難聴の発生率は、メンテナンス作業員のグループで、
グループ内で最も高いことがわかりました(65.2%)。

また消防士(55.0%)も次いで高いグループとなりました。

彼らはほぼ毎日のように空港内で騒音にさらされている仕事であるために、
騒音性難聴の割合が高いと考えられます。

聴覚脳幹誘発電位(BAEP)において保守作業員と消防士のグループで、
障害が最も深刻であることを示しました。
主にIVおよびIII-Vの間隔で示される、中央伝導時間の延長がみられました。

すなわち、高頻度の航空機騒音曝露によって、
周辺蝸牛器官と中枢聴覚経路の両方の損傷が示唆されています。

聴覚脳幹誘発電位とは、ヒトでは音刺激後におよそ10ms以内に5~7個の陽性頂点を示す聴覚誘発電位のことで脳幹聴覚路に由来する。聴力障害の有無の判定、脳幹部病巣の部位診断、脳死の判定、手術中のモニタリングなどに利用される。-Wikipedia

職場の騒音管理について考えるには?

空港はもちろん、工場等でも日常的に騒音が発生しています。

もし、従業員の方の健康管理として騒音対策が必要と考えられる場合は、
「騒音性難聴に関わるすべての人のためのQ&A」がとても良い資料です。


参考
騒音性難聴に関わるすべての人のためのQ&A 第2版茨城産業保健総合支援センター

こちらの資料では騒音測定の仕方から、
手軽に実施できる対策法まで簡単に騒音対策する方法を扱っています。

騒音性難聴については「障害補償給付」の対象になっています。
14級では1耳の聴力が40dB(1メートル先の小声を認識できなくなったもの)から、
給付対象となります
ので職業上の難聴になられた方は、
お近くの労働基準監督署までご相談ください。


参考
障害(補償)給付の請求手続厚生労働省

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