補聴器を購入する前に知っておきたいこと・考えておきたいこと
「補聴器を購入したけど結局使わなかった」
こうした経験がある難聴者の方も多いかもしれません。
今回は難聴者なら一度は検討したことがあるはずの「補聴器」について、
「なぜ補聴器が合わないのか?」、「どのように活用すべきなのか」
実際のユーザーの体験談やお医者さん、専門家の意見を集約して、
快適な補聴器利用をするための「大前提」についてご紹介したいと思います!
補聴器を購入する前に考えるべきこと
自分の難聴がどういう背景を持っているかを知ろう!
まず、大前提として「難聴」といっても人によってその状況は様々です。
一般的には「聞こえづらくなったなぁ、歳のせいかな?」というところでしょうが、
病気や遺伝性疾患によって難聴症状が現れる人もいます。
https://ohmiminavi.co.jp/2018/07/13/kindofhardhearring/
まずは「自分の聴力がどの程度なのか」、「オージオグラムはどんな形なのか」、
「家族や親族に聴覚障害者はいるか」といった基本的なことを知りましょう。
お医者さんは患者さんが詳しく聞きたがらないかぎり説明しません。
自分の難聴がどういう背景を持っているのかを知るということで、
次に「どういう補装具が使えるのか」「自分に最適な調整はどういうものか」を、
考えることができます。
これができれば「高い補聴器を購入させられたり」、
「調整が悪い補聴器を使って使えないと思ったり」せずに済みます!
まずは、自分の聴力や障害について冷静に知りましょう。
補聴器を使ってみたいと思えてから相談してもいい
難聴というと医師からはすぐに補聴器の使用を勧められると思います。
「耳が聞こえづらい」ことは会話に不自由さが生じることでもあり、
人とのコミュニケーションを重視する社会では孤立しがちになりえます。
「家族から耳が遠いと言われた」
という方も少なくないですが、本人が困っているというわけでなければ、
もしかすると補聴器は必要がないかもしれません。
一番は、自分が「補聴器を使ってみようかな」と思うことが大切です。
つまり、補聴器を使うメリットを考えてみましょう。
例えば補聴器があることで家族がイライラせず、関係ももっと良くなるのであれば、
補聴器の装用を検討してみても良いと考えます。
難聴は認知症の原因の1つと考えられており、老年期にいかに聴力を活かして、
家族や友人らとコミュニケーションを取るかは健康の大きな課題です。
補聴器は見た目の問題やこれからお話する「慣れ」の問題が大きく、
最初は心が折れそうになるかもしれませんが、
必ず人間は「慣れ」ることで自分のものにすることができます。
その一歩目は自分で「補聴器を使ってみようと思う」ことですので、
人に無理やり勧められたからではなく、自分から使ってみようと思うことが大事です。
まずは補聴器相談医に相談するのがおすすめ
補聴器の利用はこうしたコミュニケーションにおける障害を取り除く手段として、
とても有効であることは間違いありません。
しかしながら、補聴器の調整には専門的な知識が必要で、
さらには患者さんの状態を正確に把握していなければならないため、
簡単に提供できるものではありません。
一番補聴器の相談に適していると考えられるのは、
お近くの「補聴器相談医」のいる病院にかかることでしょう。
補聴器相談医は正確な聴力検査を行った上で補聴器装用を検討する際の、
アドバイスを提供してくれます。
確実なことは言えませんが、補聴器相談医から紹介された補聴器販売店のほうが、
眼鏡屋さんや地域の補聴器屋さんよりは適切な処方をしてくれるはずです。
また、補聴器販売には「認定補聴器技能者」という業界団体の資格があるので、
資格取得者は一定レベルの知識を備えているといえます。
まだまだ、その技能にはばらつきがある場合もあるので、
最初に信用できる補聴器相談医に相談することが一番大切です。
良い補聴器相談医・補聴器販売者とは
補聴器をつける=聞こえるわけではないことを説明してくれる
以前にも補聴器の選び方について専門家の方にインタビューを実施しました。
ぜひこちらもご参考にされてください。
https://ohmiminavi.co.jp/2019/03/26/hearing-aid-pro/
「なぜ、補聴器を着けても聞こえるようになるとは限らないのか」
この問いに答えるのは簡単ではありません。
一般的に補聴器があるのは、それを使うことで聞き取りやすくなるからです。
しかし、その人の症状、使い方、調整方法によっては、
本人の実感として「聞こえるようになる」とは限らないことが多いのもまた事実です。
補聴器はまず、ユーザーの聴力があること(残存聴力)があることが前提です。
適切な調整をすればある程度聞こえやすくなる可能性が高いですが、
聴力のレベルや形によってはその人の希望を叶えることが難しいこともあります。
例えば、「職場でサイレンや放送を聞き逃したくない」
というニーズを最優先する人がいるとします。
このサイレンが比較的高めの周波数で放送されていたとして、
この利用者の方の聴力が高音域で明らかに悪いということが聴力検査でわかりました。
この場合、どれだけ補聴器でがんばったとしても高めのサイレンの音を、
ものすごく聞きやすくするということは難しい場合があります。
しかし、低中音域の聴力が良好であったとすれば、
日常会話において会話に必要な調整をすることは不可能ではないかもしれません。
このように「その人の聴力の形」と「利用目的」を重ねて、
どういったことならできそうか、どういったことなら難しいかを助言します。
その意味で「補聴器をつければ聞こえる」わけではないことを説明してくれることが大切です。
さらに「補聴器を使う努力」を継続しなければ、
単なる「うるさい音集音器」になってしまいますので、
そういった継続の力を支援してくれることもまた大切です。
なぜちゃんと調整された補聴器を手に入れるのが難しいか
それはそもそも補聴器相談医に相談する人が少ないということ。
そしてレベルの高くない補聴器技師の人に当たってしまう可能性が高いからです。
日本補聴器工業会によると「約6,000店舗ある補聴器販売店のうち、認定補聴器技能者を配置している店舗は約20~30%」とされています。
つまり補聴器屋さんだからといって専門的に勉強しているわけではないのです。
メガネ屋さんに特に資格がいらないため、
補聴器も同様と考えられている可能性が高いのですが、
残念ながら本人の直感による設定やコンピューターの設定だけで、
その人に最適な補聴器を作ることは難しいです。
また、商売という観点からは「補聴器を着けてもあまり効果が見られない」と考えられても、
「あなたには補聴器が使えない可能性が高い」と言いづらいところがあります。
せっかく来ていただいたお客様の購買意欲を削いでしまう説明になるので、
補聴器専門店であっても「補聴器をつければ聞こえるようになる」
と説明してしまう傾向がある可能性はあります。
正しい調整方法を理由を持って提案してくれる
残念ながら補聴器について正しく知っている人はとても少ないといえます。
近視を矯正するメガネは度数をしっかり合わせれば見えるようになります。
乱視が入っていてもその度数に合わせてレンズを選定することができます。
しかし、補聴器に関してはそう簡単に矯正することができません。
実際に「ゼロから始める補聴器診療」という本ではこんなことが書かれています。
他機関で購入した補聴器が「役に立たない」、持ち込まれた99%の補聴器が不適切な調整だった。
93%の症例で利得・出力が不足していることも判明した。
なぜこんなことになるのでしょうか。
次回は「なぜ自分に合った補聴器調整がされないのか」についてお話致します。
中外医学社 (2016-10-25)
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