【体験談】聴覚障害者の仕事でのコミュニケーションって?複数の案を紹介します

聴覚障害者の職場でのコミュニケーションはどうすればいいの?

この記事では「聴覚障害者が健聴者を一緒に仕事をするときどうすればいいのか」ということについて、かわちめとぽんたの2人の経験を元に説明したいと思います。

二人のプロフィール

本題に入る前に、このコラムを書いた二人について簡単に説明します。

かわちめ

中途難聴で両耳共に100dB以上。
職場ではシステムエンジニアとして、健聴者に囲まれてシステム開発をしています。

ぽんた

先天性難聴で両耳共に100dB以上。
仕事では、主に筆談でコミュニケーションをとっています。

経歴や職種など細かい違いはありますが、二人とも重度の聴覚障害を持っており、職場では健聴者と一緒に仕事をしています。

自分の障害を理解してもらう

かわちめ

健聴者と一緒に仕事をする場合、まず自分の障害について理解してもらわないといけないよね。
新人研修中などは人事部のサポートを受けられたけど、配属後は基本的に自分から動かなければいけなかったんだ。だから僕は配属された直後にこういった活動をしたよ。
  • 最初の自己紹介で聴覚障害を持っていることを説明。
  • 自分の障害についてまとめた資料を作成して部会で発表。
  • 要約筆記や音声認識などの情報保障について調査・実践して、自身や環境に合った方法を見つける。

「配属後に周囲とどのようにコミュニケーションを取ったらいいのか」という不安は聴覚障害の程度によって差はあれ、誰しも持っているものだと思います。
ただ、それは聴覚障害者を受け入れる健聴者の側も同じです。

お互いの不安を和らげるために、まずは職場の人たちに自分の障害について説明してみましょう。
その上で、どのような支援を必要としているのかについて自身から積極的に話し合いの場を設けていく必要があります。

コミュニケーション方法を使い分ける

ぽんた

他人と一緒に仕事をする場合、コミュニケーションは必須だよね。
僕らが職場で使用しているコミュニケーション方法について、場面ごとに紹介するよ。

日常会話・業務連絡

日常会話や業務連絡など少人数でコミュニケーションを取る場面です。
手軽で簡単なコミュニケーション方法を使用します。

筆談

口で話す代わりに、文字や絵を紙などに書くコミュニケーション方法です。
ツールも紙や電子メモパッドなど様々で、それぞれにメリット・デメリットがあります。

  • メリット
    ・ペンと紙があればどこでも使用することができる。
    ・使用した後はメモとして後から読み返すことができる。
  • デメリット
    ・紙を用意しなければいけない。
    ・書いたものが紙に残ってしまうことを嫌う人もいる。
電子メモパッド
  • メリット
    ・ペーパーレスで軽い。
    ・その場ですぐに消すことができる。
    ・書いて消すだけのものから、保存できるまで製品のラインナップが充実している。
  • デメリット
    ・電池や充電が切れてしまうと使用できない。
    ・基本的に、書いた文字や絵の一部だけを消すことはできない。
ホワイトボード
  • メリット
    ・面積が広いので、1度にたくさんの文字や絵を書くことができる。
    ・複数人で一緒に見ることができ、健聴者も視覚的に情報を得ることができる。
  • デメリット
    ・場所をとる。

相手の会話をしっかりと聞き取りたい・伝えたい場合は、筆談でコミュニケーションをとるのが確実です。
周囲の環境や、参加者の人数などに合わせて使用するツールを使い分けましょう。

口話・ジェスチャー

口話は音ではなく、口の形から言葉を読み取る方法です。
ここでいうジェスチャーは手話のことではなく、OKや指を指すなどの手振り・身振りのことです。

口話
  • メリット
    ・健聴者と同じようにコミュニケーションが取れる。
  • デメリット
    ・習得が難しい。
    ・読み取りの精度にムラがあり、100%にはならない。
ジェスチャー
  • メリット
    ・会話の所々で挟むことで、筆談や口話のサポートができる。
  • デメリット
    ・会話の全てをジェスチャーで行うのは難しい。

口話はモノを必要としないため最も簡単にできるコミュニケーション方法ですが、間違って読み取ってしまうこともあります。例えば、地名を伝えようとして相手が「東雲(しののめ)」と言っても、「汐留(しおどめ)」と読み取ってしまうなど…。
相手の言ったことを繰り返して、お互いの認識に間違いがないか確認するようにしましょう。

会議・連絡会

会議や連絡会などある程度まとまった人数が集まる場面です。
日常会話などと比較して情報量が多いため、より早く、使用者の負担が少ないコミュニケーション方法を使用します。

要約筆記

話されている内容を要約し、文字として伝える方法です。

テキストエディタ
  • メリット
    ・パソコンを使い慣れている人であれば筆談よりも早く文字を入力できる。
  • デメリット
    ・会議、連絡会の時間が長くなると要約筆記者の負担が重くなる。
IPtalk
  • メリット
    ・連携して入力できるので、一人で入力するよりも早い。
    ・ソフトが無料配布されている。
  • デメリット
    ・スムーズに連携するためには練習が必要。
    ・効果を最大限に発揮するためには、要約筆記者を複数用意する必要がある。
手話通訳
  • メリット
    ・手話が理解できれば、話の内容もほぼ掴むことができる。
  • デメリット
    ・手話通訳を外部に依頼する場合はお金がかかる。
    ・企業秘密を含む内容の場合、外部への手話通訳を断られることがある。

IPtalkはパソコンを使いて、リアルタイムに文字を入力することで、聞こえに障害のある方のコミュニケーションを助ける情報保障ソフトです。
無料で配布されているため、企業の集会などでも使用されています。

参考
IPtalk 配布サイトIPtalk

かわちめ

筆談や口話、要約筆記…。
いろいろなコミュニケーション方法があるね。
そうだね、上で紹介したのもほんの一例だよ。
分かりやすくて使いやすいコミュニケーション方法は個人や職場ごとに違うから、自分に合ったコミュニケーション方法を探すことが大切なんだ。

ぽんた

聴覚障害者へ伝えたいこと

健聴者と一緒に仕事をしていると、思わぬところでつまづいたり困ったりすることもあります。
ここでは二人が仕事を通じて学んだこと、皆さんに伝えたいことを紹介します。

分からないことは分からないと言おう

かわちめ

僕は口話でもある程度は相手の言っていることが分かるんだけど、口話中心で頑張った結果「かわちめ君に筆談は必要ない」って誤解されてしまったことがあったんだ。
そのせいで、お願いしても中々筆談をしてくれなかったり、口話がうまく読み取れないまま話が終わってしまうこともあったよ。
口話は便利だけど、使いすぎることでそれ以外のコミュニケーションを使いにくくなるというデメリットもあるんだね。

ぽんた

かわちめ

口話を使うことは問題ないけど、少しでも分からないことがあったときはハッキリと「分からないので筆談をお願いします。」と言うべきだね。
今は口話6割、筆談4割くらいのバランスでコミュニケーションを取っているよ。

筆談をお願いすることは恥ずかしいことではない

ぽんた

人に筆談をお願いすることに抵抗を感じるかもしれないけど、筆談をお願いしてみると大抵の人は快くやってくれるから不安になる必要ないよ。
筆談での会話が新鮮で楽しいと言ってくれる人もいるよね。

かわちめ

ぽんた

筆談はやり方によっては、普通の会話よりも楽しくなる可能性を秘めているんだ。

おわりに

最適なコミュニケーション方法はひとりひとり違い、その時の環境によっても変わります。
まずは自分にあった方法を探し、会社の人に説明することが第一歩です。
健聴者と一緒に仕事をしていると大変なこともありますが、いろいろな工夫でひとつひとつ乗り越えていきましょう!

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