【解説】高齢者の難聴とは?詳しく解説します

高齢者の難聴について詳しく解説します

高齢者の耳が遠いのは仕方ないこと?

2060年には40%が高齢者となる日本

2018年の統計によれば、
総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は27.7%です。

しかし、2060年にはなんと40%が高齢者。

高齢者というのは65歳以上の人のことを指しています。

今は定年も65歳となっているところが多いので、
まだまだ70歳くらいでも現役とも言えますが、
さすがに人間の体には限界があります。

体の節々が痛くなったり、白内障や緑内障になったり、
お年寄りの話題と言ったら健康話に花を咲かせるのも、
ある意味で仕方がないことかもしれません。

加齢性の難聴は聞こえにくくなるだけではない!

加齢とともに聴覚が低下していくことは知られていますよね。
確かに多くの方が加齢に伴って耳が遠くなります。

特に高音域の聴力が低下していくとされています。

また、「聴覚補充現象」という症状も知られています。

これは年齡に伴って聴力が低下していったときに、
可聴音量を一定以上超えた大きさの音声が激しく響く現象です。

一般的には赤ちゃんの鳴き声やバイクのエンジン音、
鉄道の通過音などは80dB以上の音があります。

こうした音は多少聴力が落ちたとしても、
聞こえないということはありませんよね。

しかし、高齢者の加齢性難聴においては、
このような音が健康な耳と比べて「とても大きく聞こえてしまう」のです。

すると、非常に大きな音に聞こえてしまうため不快感があります。
健聴でも大きな音は苦痛ですがそれ以上に不快感が強まるのです。

加齢に伴う難聴は遺伝など内的要因もあるが外的要因も大きい

一般的には「歳だから仕方ない」と考えられがちな高齢者の難聴ですが、
これまでに耳が受けてきた騒音などの外的要因も影響しています。

仕事などで騒音が多い職場では耳栓等の使用が義務付けられますが、
イヤフォンやヘッドフォンでの音楽や映画鑑賞では、
それぞれのユーザーが気をつけなければ制限がありません。

研究によると騒音の少ない環境に住む住人は、
聴力の低下が少ないことが明らかにされています。

このように、自分がどのように耳を使ってきたかを振り返ると、
「確かに騒音の多い環境にいた」とか、
「毎日爆音で音楽を聞いていた」などと思い当たることもあるかもしれませんね。

高齢者の年代別難聴症状の違い

70歳代までは高音域の聴力低下が顕著

年齡とともに聴力が低下すると言っても、
どの程度低下するのが一般的なのかについては一般的には知られていません。

Audiology Japanに掲載された、
「聴覚に関わる社会医学的諸問題「超高齢社会と聴覚補償」」という論文では、
北里大学病院人間ドック受診者の聴力の推移が紹介されています。

岡本牧人. “聴覚に関わる社会医学的諸問題 「超高齢社会と聴覚補償」.” Audiology Japan 56.1 (2013): 50-58.

○が50歳代、◇が60歳代、□が70歳代、最も下の黒丸が80歳代となります。
このように50歳代以降は聴力が明らかに低下することがわかります

そして、75歳を超えると男女とも 1kHz以下の聴力が、
25dBを超えていることがわかります。

25dBというのはとても小さな音ですが健聴であれば聞こえる音でもあります。

音が少しずつ聞こえなくなることで、
ことばの聞き取りが落ちるのは母音や子音の音に、
自分が聞こえにくくなる周波数の音が含まれているためです。

すると、いわゆる「聞き間違い」が発生しやすくなります。

80歳以降は語音明瞭度が下がりことばの聞き取りに障害が起こる

語音明瞭度とはことばの聞き取りがどの程度かを示す指標です。

一般的な聴力検査では「ピー」という音が聞こえますよね。
これは純音聴力検査という「音が聞こえるかどうか」の検査です。

普通は音を大きくすれば聞こえますし、
それはことばが聞こえたときも同じです。

しかし、純音聴力検査の結果に対して語音の聞き取り悪い場合があります。
これは内耳から脳にかけての部位に障害が現れるために起こります。

これを「後迷路障害」といいます。

つまり、補聴器等で音を調整して届けることができれば、
神経に情報を伝えることができたのですが、
80歳以降においては内耳から脳にかけての障害が現れるために、
補聴器を使っても改善しないということが起こりえます。

難聴でも可能なかぎり聴力を活かすことが大切

加齢に伴う聴力の低下は避けられないことですが、
日常的なコミュニケーションに支障をきたしている場合は、
できるだけ早期に補聴器の装用をおすすめします。

これによって人生において自分の力を最大限発揮しやすくなりますし、
家族や友人とのコミュニケーションが円滑になるからです。

加齢に伴う難聴が現れると「聴覚補充現象」など、
日常的に不快感を感じやすい場面も増えることが予想されます。

そのような際にも、自分が聞こえにくくなっているということを、
意識していれば気にしないこともできるかもしれません。

また、日常的に補聴器の装用に慣れていれば、
騒音が耳に届いてもいつものことだと気持ちを楽に受け取れるかもしれません。

最後まで自分らしく、楽しく日々を過ごすために、
自分の聞こえについてちゃんと認識するためにも、
専門家に相談したりご自身で情報を集めて、補聴器の装用を検討しましょう。

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