【解説】聴覚障害者の特徴かも?耳の代わりに目の視覚能力が高まる

聴覚障害者は耳の代わりに視覚能力が高まる

耳が良くない分、目の能力が発達する?

猫の脳を使ったカナダのウェスタンオンタリオ大学の研究

聴覚障害があると当然健聴者よりも耳からの情報が不足します。
しかし人間はそんなことで生きられなくなるような生物ではありません。

代わりに目の機能を拡張させることができるのです。
実はそのようなことは「なんとなく」みなさんも感じたのではないでしょうか。

例えば視覚障害者の方が見えないはずなのに人の気配やモノの気配を感じる。
これは決して超能力ではないと思いますが、
なんらかの「気配」を感じて避けることができるようになったわけです。

実は聴覚障害についてはそのような代わりに発達する能力はあまり知られてません。
しかし、今回の研究では聴覚障害者も視覚の能力が発達することがわかりました。

そんな人間の五感の不思議に迫った研究をご紹介します。

聴覚を司る脳の一部分が使われないというのはもったいない?

果たして脳がそのように思っているかはともかくとして、
聴覚を司る脳の一部が何らかの原因で仕事がなくなったとき、
脳はどのように働きを変えていくのでしょうか。

聴覚障害は耳を構成するどこかしらの部位がうまく働かないため、
脳まで聴覚の信号が届かなくなっているとされます。

例えばおたふく風邪によってもたらされる「ムンプス難聴」は、
内耳などの中枢神経系に感染することが多いとされます。

内耳は鼓膜から伝えられた信号を受け取るために、
重要な役割を果たしている器官です。

その内耳が炎症などで細胞が死滅してしまうと、
うまく聞こえなくなってしまいます。

これがいわゆるムンプス難聴と言われる難聴の原因です。
こうなると信号が脳まで届かなくなります。

これまで脳に伝わっていた信号が届かなくなるということは、
脳も信号を受け取ることがないので暇になってしまうのです。

これまで脳はその場所によってそれぞれ、
果たす機能が異なると考えられてきました。

だから、聴力を失ったら脳の聴力を司る部分は一生使われないかもしれない。
そう考えられてきたのです。

聴覚を失うと代わりに視覚に多くの脳が割り当てられる

今回の研究で明らかになった事実は意外なものでした。

なんと聴覚を担当する脳の部位の一部は、
そのまま失われるのではなく一部が視覚に割り当てられるのです。

聴覚障害者の視覚が優れているのは、
本来聴覚をつかさどる脳細胞が視覚に割り当てられるためである
可能性のあることが、ネコを使った最新の研究でわかった。

これまでも聴覚障害者の視覚機能が健常者よりも、
優れていることは研究で明らかにされていました。

今回、猫を用いて実験をしたことで、
より正確に脳の部位が視覚機能に割り当てられたことがわかりました。

聴覚と同様の機能を司る部位だけが使われる

一方で、聴覚で利用していた脳のすべての部分が、
視覚に使われるわけではないようです。

今回の実験では刺激の位置と刺激の動きに関する視覚機能については、
聴覚障害のある猫の方が有利であったことがわかりました。

これは、視覚と聴覚の両方に共通する感覚機能といえます。

一方で例えば、空間処理機能が聴覚系に存在する可能性は低く、
色覚なども聴覚障害者だからといって有利になる可能性は低いようです。

つまり、脳の部位でも刺激の知覚様式の反応が高い部分とそうでない部分があり、
刺激の位置や動きを認識する部位は、視覚でも聴覚でも用いるため、
両方で機能する性質をもっているというわけです。(超モード性)

脳を訓練すれば眠っていた能力が開くというのは、
あながち間違いではないかもしれませんね。

Lomber, Stephen G., M. Alex Meredith, and Andrej Kral. “Cross-modal plasticity in specific auditory cortices underlies visual compensations in the deaf.” Nature neuroscience 13.11 (2010): 1421.

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