【解説】ホワイトノイズとは?聴覚障害者との関連とは?

ホワイトノイズのメリットとデメリットについて調べてみた

ホワイトノイズに関する最新の聴覚研究

ホワイトノイズのメリットやその効果

ホワイトノイズとはテレビやラジオの電波が、
うまくチャンネルにあわないときのあの「ザーッ」というノイズです!

ホワイトノイズは電気的な印象がありますが、
音響学的には全周波数帯が均一に出ている音と説明できます。

このホワイトノイズ、何かに似ていると思いませんか?

そう、「蝉の鳴き声」や「波の音」、「川の流れの音」に近いのです。
自然界の中にはホワイトノイズに近い音が溢れていますね。

これを「自然音」と呼んだりもします。
実はホワイトノイズは治療にも使われます。

聴覚障害者にも多い耳鳴りの治療法として使われます。
「耳鳴り適応療法(TRT)」ではホワイトノイズに近いノイズを、
耳鳴りの患者さんの耳鳴り音と同じ程度の音量で聞かせることで、
自分の耳鳴りを意識しながらも徐々になれていく訓練をします。

耳鳴り専門外来などでは一般的に行われる治療法なので、
有効かつ効果的な耳鳴り治療方法と考えられています。

ホワイトノイズは、集中力アップや睡眠導入効果があるとされています。


参考
適度な「ノイズ」が人間のパフォーマンスをブーストしてくれるかもしれないGIGAZINE

私は静かすぎると逆にソワソワしてしまう気がします。

そのためカフェで仕事をしますが、
カフェで仕事が捗るのは適度なノイズが心地よいというのもありながら、
人目があることで集中できるというのも大きそうだと感じます!

ホワイトノイズが脳に悪影響を与えるという研究論文もあるが…

さて、このように耳鳴り治療でも用いられるホワイトノイズですが、
その反対に人間に悪影響であると考える科学者もいます。


参考
「耳鳴り軽減」や「集中力アップ」に効果があるといわれるホワイトノイズは聞き続けると脳に悪影響が出る可能性ありGIGAZINE

一般的に聴覚障害およびそれに伴う耳鳴りの症状は、
大きな音によって耳の細胞が損傷した結果として、
引き起こされると考えられています。

このような症状は良く知られていましたが、
バックグラウンドノイズ(継続的に聞こえる小さな音)についてはよくわかっていません。

この研究では「バックグラウンドノイズへの長時間にわたる曝露により、
脳が影響を受けるという動物実験の結果に着目し」た
とされています。

GIGAZINEによると、「非外傷性騒音への長期間の曝露が、
中央聴覚神経系の不適応な再構成を引き起こし、
人間の耳鳴りの根底にあると考えられている
聴覚系の永続的な広範な阻害を伴っている可能性がある」と説明されています。

ちょっとむずかしいですが、耳を痛めるような騒音でないノイズでも、
長期的には聴覚神経系に良くない効果を与えてしまうという説
です。

あくまで一説ではありますが論文の筆者らは博士号を取得した研究者であり、
ひとつの意見としては一理あるのでしょう。

果たして本当にホワイトノイズは悪影響を与えるのか?

そうは言ってもすでに世界中で耳鳴り治療法としてのTRTは普及しています。

なぜ今になってこんな一石を投じるような研究が出されたのでしょうか。
そこで、論文のアブストラクト(概要)を読んでみました。

論文のタイトルは以下のとおり、
直接的にホワイトノイズを利用した治療法に言及しています。

「耳鳴りに対するホワイトノイズ療法の意図しない結果—耳鼻咽喉科のコブラ効果」

「コブラ効果」というのは良かれと思ってやったことが、
長期的に反対の効果を引き起こしてしまうということわざから来ています。

筆者の主張は次のとおりです。

耳鳴りの患者に一般的に推奨される治療法であるホワイトノイズへの曝露は、
神経の健康を低下させ、認知機能を低下させる脳の不適応な変化を引き起こす方法であり、
脳の内部構造の変化に関与していると主張しています。

結論においてもノイズ曝露療法は、耳鳴り緩和のための魅惑的な、
短期ソリューションを提供しますが、長期的には中枢聴覚系と脳の機能的および、
構造的完全性をより一般的に弱体化します。

よって、耳鳴りの治療として構造化されていない、
ランダムノイズを使用したサウンドセラピーは避けてくださいと結論づけています。

この論文は2018年の5月2日に公開された比較的新しい論文ですが、
他の研究者からは反論や疑問の声も提起されています。

人間を対象にしたホワイトノイズの影響に関する研究はない

実はこの論文には続きがあります。
2019年1月29日に公開された同筆者らによる論文は以下のタイトルが付けられています。

「聴覚に有害な影響を与えるブロードバンドノイズの証拠はありません」

Attarha M, Bigelow J, Merzenich MM. No Evidence of Broadband Noise Having Any Harmful Effect on Hearing—Reply. JAMA Otolaryngol Head Neck Surg. Published online January 24, 2019145(3):292–293. doi:10.1001/jamaoto.2018.3988

タイトルが以前の主張とまるで逆のように読めますが、
反響および反論が大きかったため説明をしたかったのではないかと考えられます。

前回の論文ではあくまで動物の研究において、
ホワイトノイズが脳に負の影響を与える可能性を指摘しているものです。
人間の研究はされていないので「よくわからない」というのが正確です。

人間も動物ですが、実験動物では問題なくても、
もしくは何かしらの問題があっても人間ではどうかわからないからです。

しかし、一方で動物の中央聴覚経路で示された負の影響がありながら、
人間では当てはまらないと仮定することもまた安全ではないと考えられます。

つまり、説得力のある動物研究をより真剣に受け止めるために聴覚学研究と
臨床コミュニティを刺激することであり、
今後一層慎重な研究が必要であると提起するという内容でした。

結論としてホワイトノイズが人体にどんな影響があるかは不明

科学的には「ホワイトノイズの人体への影響は不明」となるのですが、
これまで30年近く耳鳴りの治療法として使われてきたノイズが、
人体に大きなマイナスの影響を与えるとは考えにくいでしょう。

それよりも日常的な耳鳴りに悩まされることによる、
QOL(生活の質)の劣化を防ぐことがより良い生活になるはずです。

耳鳴りの症状がない人も集中力アップや睡眠導入のために、
ホワイトノイズを発生させる機器を利用していますが、
現時点では耳を損傷させてしまわない程度の音量で、
自分が心地よいと感じる時間だけ利用することをおすすめします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です