【疑問】聴覚障害でも骨伝導タイプのイヤフォンや補聴器が使えるの?

聴覚障害でも骨伝導タイプのイヤフォンや補聴器が使えるの?

骨伝導補聴器とは?

骨を伝わる骨導音という仕組み

「聞こえる」というときに大きく分けて2種類あることを知っていますか?

  1. 外から空気を通して聞こえる気導音
  2. 骨を通して内側から聞こえる骨導音

音楽鑑賞や映画鑑賞、普段の会話などで「聞こえる」というときは気導音を指しています。
一方、自分の声というのは気導音(外からの音)だけでなく、
自分の顔の骨をとおして聞こえる骨導音と混ざって聞こえています。

では、骨導音とはどうやって「聞こえる」のでしょうか。
耳は大きく分けて「外耳」「中耳」「内耳」という3つの区分がされますが、
音の高低などを聞くためのセンサーとなる機能は「内耳」にあります。

骨導音は直接内耳に音がとどくことで「聞こえる」音であると言えます。

骨導音イヤフォン・スピーカーの仕組み

骨導音イヤフォンや骨導音スピーカーの仕組みはとても単純です。

普通のイヤフォンやヘッドフォンはスピーカーを小さくしたものです。
骨導音イヤフォンやヘッドフォンもほとんど同じですが、
「振動板」という板から音ではなく「振動」を作り出し、それを骨に当てることで聞こえます。

KITAGAWA, Wataru, and Takaharu TAKESHITA. “Technology for bone conduction speaker and its characteristics analysis.” Journal of the Japan Society of Applied Electromagnetics and Mechanics 25.3 (2017): 319-324.

骨伝導補聴器が使える聴覚障害者・使えない聴覚障害者

伝音性難聴で外耳または中耳に障害や原因がある人は使える可能性

https://ohmiminavi.co.jp/2018/07/13/kindofhardhearring/

骨伝導によって「聞こえる」のはあくまで、鼓膜や耳小骨など、
外耳から中耳にかけてのみに障害があると考えられる、軽度から中度の聴覚障害者のみです。

自分がどういう原因で聞こえづらいのかわからないという人は、
まずは耳鼻咽喉科で診察を受けてから、補聴器販売店で骨伝導が使えるか聞いてみましょう。

ちなみにですが、健聴者も骨伝導イヤフォンは使用できますが、
気導音と比較するとまったく同じ音が聞こえるというわけではないのが面白いところです。

ちょっと簡単な実験をしてみましょう!

普通に「あいうえお」と発声してみてください。
次に耳を塞いで「あいうえお」と発生してみてください。

耳を塞ぐとすこし「こもった」音になりますが、健聴であればしっかり聞こえるはずです。
気導音と骨導音では音の高さによって聞こえやすい、聞こえにくいがあります。

感音性難聴の場合は骨伝導補聴器を利用してもあまり効果が見られない

感音性難聴の場合は、内耳もしくは中枢に障害がある可能性が高いため、
骨導音を用いたとしても「信号」としては届いているはずですが、
その後の音を「音として知覚する」ところで問題が生じているため効果が見られないことが多いです。

これはつまり、前にも何度か取り上げた「音の形」が崩れている場合ですね。

また、技術的な問題から重度の難聴には対応することができないため、
骨伝導の補聴器の多くは、重度難聴者やろう者には使われません。

骨伝導補聴器のメリット・デメリット

軽度難聴で鼓膜が繊細な人には骨伝導も一つの選択肢

骨伝導のメリットは補聴器あるあるの音が大きすぎることで、
不快感を感じたり鼓膜が痛くならないことです。

また、骨伝導は耳の後ろ骨などにつけることができるので耳をふさがず、
自分の聴力が残っている場合は周りの音と組み合わせて聞こえます。

  • 鼓膜が繊細な人
  • 自分の聴力も活かせる程度の軽度難聴

デメリットは低音が聞きにくいなど音の質が悪い

骨伝導のデメリットは一般的な気導音をつかう補聴器に比べると、
詳細な設定等ができないため、人によってはあまり効果が出ない点です。

特に中度から重度難聴者の多くは感音性難聴という、内耳より内側に障害があることが多く、
その場合は、骨伝導でも一般的な補聴器でも大きくは変わりません。

そのため確実に聞こえる範囲の音をしっかり届けられる、
気導音を利用した一般的な補聴器を利用します。

  • 低音が聞きにくい
  • 重度難聴者には効果が見られない

 

聞こえにくくなったと思ったら補聴器より先に病院へ

耳硬化症などは最初は伝音性の軽度難聴だが深刻化する可能性

伝音性難聴の代表例として「耳硬化症」があります。
耳硬化症とは耳の中耳にあたる「アブミ骨」が硬化してしまう病気です。

耳硬化症は今では手術を受けることで回復する病気です。
最初は軽度の伝音性難聴ですが症状が悪化すると混合性難聴(感音性が合わさる)になります。

耳鼻科では一般的な気導音の聴力検査のほか、骨導音の聴力検査を行い、
その差が特に低音で大きい場合は耳硬化症を疑います。

患者さんは女性に多く、20代以降で鼓膜に異常がないにもかかわらず、
進行性の難聴である場合は一般的にはこの病気を疑います。

もちろん、補聴器を使うこともできますので病院でお医者さんと相談してから、
自分に合った治療方針を考えてくださいね。

結論「聴覚障害で骨伝導補聴器が使える人は軽度の伝音性難聴者」

いかがでしたでしょうか。聴覚障害にも様々な原因と障害部位があります。

骨伝導という何やら聞き慣れない技術について取り上げましたが、
思わず「普通の補聴器よりも最新型だから聞こえるはず!」と思ってしまうかもしれません。

しかし、骨伝導というのは日常的に自分の声を聞くときに自然に使われている作用です。
骨伝導だからといって聞こえやすくなるということは多くありません。

骨伝導は耳をふさがなくていいなどメリットもあるものの、
一般的に聴覚障害者にとってあまり多くのメリットはありません。

自分が「どういった聴覚障害」で、「どういった場面で使いたいのか」を、
はっきりとさせることで自分に合った補聴器を探すことが大切ですね。

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