【疑問】値段が高い多機能補聴器にすると聞こえやすくなるの?

補聴器は値段が高い方が聞き取りやすくなる?

補聴器自体は調整が必要なので高くなってしまう

補聴器の値段を聞いて「高い!」とびっくりされる方もいるかもしれません。

適切な補聴器装用のためには認定補聴器技能者などがしっかりと、
補聴器ユーザーの方にお話をしながら微調整を繰り返していかなくてはならないので、
そのために時間も大変かかってしまいます。

すると最終的にはある程度高額にならざるを得えません。
だいたい日本できちんと調整できる補聴器となると10万円前後でしょうか。

こうした補聴器がそもそも高価格にならざるを得ないことは仕方がないので、
健康保険や税制上の優遇、行政からの補助金などが充実することが望ましいです。

一方で百万円を超えるような補聴器は必要なのでしょうか。
さまざまな機能がついていますがそれらをすべて使うと若い頃の聞こえに戻るのでしょうか。

近年の研究では、追加機能が必ずしも聞こえの結果を、
改善するわけではないことがわかっています。

たしかに世の中を見渡すと補聴器メーカーはさまざまな機能と技術を、
さまざまな価格帯で組み込んで製品のラインナップを作っていますよね。

でも、それらの追加技術の有効性については各メーカーの広告宣伝や、
各メーカーから費用がだされた研究しか見ることがありません。

こうした高機能補聴器と普通レベルの補聴器を比較して、
聞き取りやすさや生活の質に影響を与えたのかという研究が、
オーストラリアの政府のWebページで紹介されていたのでご紹介します。

高齢者の難聴者を対象にした高い補聴器と安い補聴器の研究

米国のメンフィス大学補聴器研究所は、政府の助成対象となる補聴器と、
部分補助の対象になる補聴器を利用した場合、
利用者の聞こえの結果に違いがあるかを調査しました。

一般的には政府の助成対象となる補聴器は、
補聴器のラインナップの中では中程度(10万円前後)のものとなり、
あまり高額な補聴器は対象にならないか、もしくは補助に制限が掛けられることが多いです。

そのため「完全助成対象の補聴器」と「部分補助対象の補聴器」を比較しました。

研究では以下の項目について調査をしました。

  • 音声理解(背景にノイズのある中での単語理解)
  • リスニングの努力程度(補聴器を利用して聞き取るのにどれだけの負荷がかかるか)
  • ローカリゼーション(音が到来する方向の検出)
  • 音の受容性(音声以外の音が快適に聞こえるか)
  • 生活の質

この研究は合併症のない軽度から中程度の感音難聴を伴う、
英語圏の高齢者(61歳から81歳)を対象に実施されました。

これらの被験者の方は一般的には「老人性難聴」「加齢性難聴」と言われます。

補聴器の機能が補聴器利用者に与える影響

実験では2つの主要な補聴器メーカーの補聴器を利用しました。
もちろん、各メーカーごとに完全助成対象の機種と部分補助対象の機種を2つ選んでいます。

その結果、実験室および実生活状況での音声理解、リスニング努力の程度、
音の受容性、および生活の質が改善されないことがわかりました。

完全助成対象となる補聴器と部分補助対象となる補聴器を、
比較した場合は同等という結果になりました。

ただ、1つの不自然な実験室状況(静かな環境での高周波フィルタ処理した音声)において、
部分補助対象となる補聴器のほうが良いパフォーマンスを出しましたが、
実際の状況においては参加者に知覚される利点にはなりませんでした。

この研究から補聴器の機能について言えること言えないこと

メンフィス大学の研究では統計的に有意な結果も、
臨床的な重要な違いも見られませんでした。

一方で部分補助対象となる補聴器に備わっている機能で、
今回の実験では調査されていない利点がある可能性はあります。

別の研究では、後ろから発せられる音声に対して、
部分補助対象となる補聴器のほうがメリットが見られたことがわかりました。

ただし、音声理解の改善を目標とする大多数の難聴者にとっては、
完全助成対象となる補聴器と部分補助対象となる補聴器に、
明確な違いは見られないということです。

日本でも助成対象となる補聴器がある

補聴器屋さんにお尋ね頂くかみみなびの記事をご覧ください

日本でも国が難聴者の利用する補聴器に助成金を支払う制度があります。

助成対象となる補聴器は各メーカーのWebページもしくは、
みみなびでも下記の記事でまとめていますのでご確認ください。

一般的には片耳1台あたり10万円以下程度のものがカバーされます。

「ちょっと安めなのでちゃんと使えるか不安」という方も、
今回の研究で「高い補聴器と違いはない」ということがわかり一安心ですね。

https://ohmiminavi.co.jp/2018/08/06/%e8%a3%9c%e8%81%b4%e5%99%a8%e3%81%ae%e5%80%a4%e6%ae%b5%e3%81%ae%e7%9b%b8%e5%a0%b4%e3%81%af%e3%81%a9%e3%81%ae%e3%81%8f%e3%82%89%e3%81%84%e3%81%aa%e3%81%ae%ef%bc%9f/

今回の記事の出典

今回はオーストラリア政府のWebページで紹介されていた研究をご紹介しました。

こうして政府からきちんと根拠のある研究を紹介するのは、
とても消費者のためになることですよね。

今回は「聞き取りやすさ」に注目しましたが、スマホやテレビとの連携など、
高機能補聴器にしかついていない機能はあります。

「こうした最先端の機器しかない機能がついていたほうがよい」
という思いで購入されるのは何の問題もありません!

ぜひ、一度ご自身でどの補聴器が自分に必要か考えてみると良いでしょう。


参考
Do the additional features of partially subsidised hearing devices improve client outcomes?オーストラリア政府保健省

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